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105歩で生き物観察

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浜松科学館自然観察園は地域の方々のお散歩ルート。歩道は端から端まで105歩。普通に歩けば1分足らずで通過してしまいます。 その1歩1歩にもたくさんの生き物がいて、関わり合い、科学…
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#植物

この枝を切り落とした犯人は誰?

前回の記事で、「小さな森での小さな出会い」という言葉を挙げました。 しかし、いきなり生き物と出会えと言われても、どこをどう探せばいいのか困ってしまうと思います。 今回は「小さな出会い」に出会うコツをご紹介します。 今の時期、自然観察園の歩道にはたくさんの枝が落ちています。 拾い上げて見てみると、どの枝も青々とした葉と、ドングリが付いていました。 葉やドングリの形から、コナラの枝と分かりました。 つまり、①新鮮で、②ドングリの付いた、③コナラの枝だけがたくさん落ちているので

「ギザギザ」と「ツルン」、葉っぱの形を観察してみた

今年の夏は特に暑かったですね! 浜松市は日本の歴代最高気温に並ぶ「41.1℃」を記録し、話題になりました。 さて、太陽光が降り注ぐ中、植物たちはその光を葉で受け止めて、「光合成」しています。 光合成とは光エネルギーを利用して、水と葉から取り込む空気中の二酸化炭素を材料に炭水化物(食べ物)を作ること。 この強い日差しも、植物にとっては無くてはならない資源なのですね。 さて、今回は光合成のメイン工場である葉の形に注目してみましょう。 下に自然観察園に生える「コナラ」と「ク

複数枚に見えるけれど、実は1枚な葉っぱの話

前回は葉の鋸歯の有無に着目して、クスノキとコナラの光合成の戦略を見てきました。 今回は、秋に美しく紅葉するイロハカエデ、ナンテンの葉も並べて一緒に比較してみましょう。 それぞれの葉を「1枚ずつ」並べましたのでご覧ください。 ん?何かおかしいですか? おそらくナンテンの葉に違和感があると思います。 葉を1枚ずつ並べたはずですが、たくさんの葉が付いているように見えます。 実は間違いではなく、これで「1枚の葉」なのです。 葉の1枚は、落葉するときに茎や枝などからはがれる部分

葉の裏で裏取引 ~クスノキの害虫を防除する意外な方法~

明けましておめでとうございます。 本年もよろしくお願いいたします。 大晦日から元旦にかけて寒波が到来し、本格的な冬がやってきましたね。 お身体には気を付けてお過ごしください。 自然観察園もすっかり冬で、生き物たちの気配も少なくなりました。 木々の葉は落ち、一年中葉をつける常緑広葉樹が目立つようになりました。 植物たちは寒空の下、温かい春を静かに待っています。 しかし、春が来たら来たらで展開したばかりの柔らかい葉を大量のイモムシたちにむしゃむしゃと食べられてしまうこともし

鼻がムズムズ…。けれど花粉は面白い!

そろそろスギ花粉の舞う季節がやってきますね。 今回は、花粉症の方には憎き存在、「花粉」に注目したいと思います。 そもそも花粉はどんな形? 植物の種によって花粉の形は違うの? そんな素朴な疑問を明らかにしていきたいと思います。 タンポポの花粉をみてみよう浜松科学館自然観察園を歩いているとセイヨウタンポポが咲いていました。 冬の茶色な景色の中で、鮮やかな黄色がとても映えます。 タンポポの仲間のほとんどは、春~夏に開花しますが、本種は一年中花を咲かせます。 通常、花には「

タンポポとナメクジの知られざる物語。

浜松市の中心地にある自然観察園は、ヒトと自然が関わり合い、その関係性を学び・考えることができる大切な場所です。 外来生物はどうして悪者?2020年の夏から毎月1回、自然観察園の整備をしています。メンバーは浜松科学館職員とボランティアの皆さん。活動内容はゴミ拾い、枝打ち、立ち枯れ・小木の伐採等など多岐にわたります。中学生からシニアの方まで幅広い年齢層が有志で集まり、無理のない範囲で和気あいあいと実施しています。 「自然観察園を利用する人々が気持ちよく訪れられるように」「浜松

「色」と「食」で、春を楽しむ。

少しずつ暖かくなってきましたね。3月5日は啓蟄(けいちつ)。生き物たちが蠢(うごめ)きはじめる季節です。モノクロな冬から、色とりどりな春へ向けて、生き物たちは変化しはじめています。 今回は、植物たちの「色」に注目してみましょう。 「色」と「食」で、春を楽しむ自然観察園を歩くと、地面に「緑色」が目立つようになりました。 地に張り付くように葉を広げるセイヨウタンポポ。 若い黄緑色のヨモギ。 そして、ストロー状の葉を直立させるノビル。 これらは食べることができる野草です。中で

”ハレの日” は ”晴れの日” に。意外と自由度が高いツクシとタンポポの話。

タンポポの綿毛。 天気の良い日に「フー」と吹くと、気持ちよく飛んでいきますね。 タンポポにとって綿毛を飛ばす日は、人間社会で言うところの「ハレの日」。 子供たちを旅立たせる特別な日です。 しかし、もしもその日に雨が降ってしまったら… 種子は雨粒で叩き落されて、遠くまで飛んでいくことができません。 一年をかけた子育ては、失敗に終わってしまうのでしょうか? 今回ご紹介する植物たちには、「晴れの日」を選ぶ特別な能力があるのです。 ツクシの胞子は湿度を感じとる今の時期に自然観

マンリョウの葉に棲む「謎の細菌」の話

最近ある植物から、科学が進歩しても自然界にはまだまだ明らかにできない謎が存在することを実感しました。 生き物たちの営みは、私たちが想像できないほど奥深く、面白いです。 今回はそんなエピソードをご紹介します。 クリスマスカラーなマンリョウを探してみようこのような樹を見たことがありますか? マンリョウという常緑樹で、観賞用として庭や公園、神社等に植えられる身近な植物です。果実の濃い赤色と葉の緑色はまさにクリスマスカラー!冬季に実ることから、クリスマスにぴったりです。 自

こたつでミカンをじっくり観察

12月も終盤。この記事が2021年最後の配信となります。 本年もお世話になりました。 来年もよろしくお願いいたします。 年の瀬になりぐっと寒くなりましたね。 こたつの中で温まりながら、この記事を読んでいる方もいるのではないでしょうか。 こたつといえば・・・そう、ミカンですね! 今回はミカンをじっくりと観察したいと思います。 ぜひお手元にミカンを置いて、読んでみてください。 ヘタを観察してみようまずはヘタに注目してみましょう。 ミカンのてっぺんの緑色の部分がヘタです。

ケヤキの葉に秘められた数字の話

公園や街路樹の植え込みにたまっているケヤキの落ち葉。 普段何気なく通り過ぎているそんな場所にも、面白い現象が隠れているかもしれません。 ケヤキの落ち葉年末に自然観察園で落ち葉を観察するイベントを開催しました。 参加者の皆さんは落ち葉の色形を手掛かりに樹種の同定体験をしました。そこで苦労したのが「特徴の幅」です。 例えばコナラの葉は、図鑑によると葉の先端から基までの長さ(葉身の長さ)が6~15cm で、全形は中央よりも葉先の方で幅が大きくなる卵型をしています。しかし、中に

お散歩が楽しくなる!「苔ミニガイドブック」を公開

今年4月「地衣類ミニガイドブック」を公開しました。 科学館職員やボランティアさんに紹介したところ、大好評! 皆さんミニガイドブックを片手に、夢中でコンクリートや樹に張り付いて地衣類を観察していました。 「通勤途中に街路樹でコフキメダルチイ見つけちゃいました~」 良い傾向です。 完全に生き物観察の世界に片足を突っ込んでいます。 さて、今回は「苔ミニガイドブック」を公開いたします。 ※以下、「苔」を「コケ」と記述します。 ミニガイドブックのデータは下記リンクから無料でダ

水を吸って大変身!?「苔の劇的ビフォーアフター」をタイムラプスで撮影してみた

はじめに「梅雨って雨ばかりで嫌い」 「そんなこと言わないで。植物にとって、この雨は『恵みの雨』なんだから」 梅雨の時期になるとラジオやテレビなどからよく聞かれる言葉「恵みの雨」。 確かに降水量が少ない空梅雨になると一部の野菜の価格が高騰しますね。 しかし普段の生活で農業や家庭菜園などを行わない、植物と直接的なかかわりが少ない人は体験的にあまり実感がないかもしれません。 そんな「恵みの雨」を、観察して体感できる身近な生き物がいます。 その生き物こそ、今回のテーマ「コケ植物

映える水滴を撮ってみたい! ~植物の撥水性:ロータス効果とペタル効果~

はじめに今日は自然観察園で「映える(ばえる)」写真を撮りたいと思います。 SNS(Social Networking Service)の普及によって写真を撮ったり見せたりする機会が増えました。たくさんの情報が流れるSNSでは、瞬間的に「すごい!」と感じる、いわゆる「映える」という形容詞が価値観の一つとして定着しています。 さて、自然観察園で映える写真を、と考えてみると一体何を撮ればよいでしょうか? 最近は猛暑が続いていますので、例えば「植物につく水滴」なんて涼し気で良い