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105歩で生き物観察

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浜松科学館自然観察園は地域の方々のお散歩ルート。歩道は端から端まで105歩。普通に歩けば1分足らずで通過してしまいます。 その1歩1歩にもたくさんの生き物がいて、関わり合い、科学…
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#生物がすき

ケヤキの葉に秘められた数字の話

公園や街路樹の植え込みにたまっているケヤキの落ち葉。 普段何気なく通り過ぎているそんな場所にも、面白い現象が隠れているかもしれません。 ケヤキの落ち葉年末に自然観察園で落ち葉を観察するイベントを開催しました。 参加者の皆さんは落ち葉の色形を手掛かりに樹種の同定体験をしました。そこで苦労したのが「特徴の幅」です。 例えばコナラの葉は、図鑑によると葉の先端から基までの長さ(葉身の長さ)が6~15cm で、全形は中央よりも葉先の方で幅が大きくなる卵型をしています。しかし、中に

今日のチューリップは、昨日のチューリップよりも大きい

見落としがちな変化新聞の片隅やファミリーレストランの卓上にある「間違い探し」。2枚の絵を見比べて、違っている箇所を見つけるゲームです。誰もが一度は遊んだことがあるのではないでしょうか? 試しに科学館の花壇を舞台にした間違い探しを作ってみました。2枚の絵には違うところが4つあります。ぜひチャレンジしてみてください。 答えは下へスクロールすると出てきます。 正解はこちら。 ① 日付 ② 花の色 ③ 花が開いている・閉じている ④ 花の大きさ ④の違いは僅かなもので、意地悪

お散歩が楽しくなる!「地衣類ミニガイドブック」を公開

地衣類の世界を探検しよう突然ですが、下の写真は筆者自宅の駐車場です。 一見すると何の変哲もない風景ですが、よく見ると縁石の表面の一部分(白色矢印)がオレンジ色に変色しているのが分かります。 実は、これはコウロコダイダイゴケという地衣類(ちいるい)の一種。生き物なのです。 ※以下に地衣類の拡大写真が出てきます。集合体が苦手な方はご注意ください。 ルーペで観察するとこんな感じ。子器と呼ばれる生殖器官が、どら焼きのようで可愛いですね。日々使っている駐車場の縁石に、こんな面白い

お散歩が楽しくなる!「苔ミニガイドブック」を公開

今年4月「地衣類ミニガイドブック」を公開しました。 科学館職員やボランティアさんに紹介したところ、大好評! 皆さんミニガイドブックを片手に、夢中でコンクリートや樹に張り付いて地衣類を観察していました。 「通勤途中に街路樹でコフキメダルチイ見つけちゃいました~」 良い傾向です。 完全に生き物観察の世界に片足を突っ込んでいます。 さて、今回は「苔ミニガイドブック」を公開いたします。 ※以下、「苔」を「コケ」と記述します。 ミニガイドブックのデータは下記リンクから無料でダ

水を吸って大変身!?「苔の劇的ビフォーアフター」をタイムラプスで撮影してみた

はじめに「梅雨って雨ばかりで嫌い」 「そんなこと言わないで。植物にとって、この雨は『恵みの雨』なんだから」 梅雨の時期になるとラジオやテレビなどからよく聞かれる言葉「恵みの雨」。 確かに降水量が少ない空梅雨になると一部の野菜の価格が高騰しますね。 しかし普段の生活で農業や家庭菜園などを行わない、植物と直接的なかかわりが少ない人は体験的にあまり実感がないかもしれません。 そんな「恵みの雨」を、観察して体感できる身近な生き物がいます。 その生き物こそ、今回のテーマ「コケ植物

映える水滴を撮ってみたい! ~植物の撥水性:ロータス効果とペタル効果~

はじめに今日は自然観察園で「映える(ばえる)」写真を撮りたいと思います。 SNS(Social Networking Service)の普及によって写真を撮ったり見せたりする機会が増えました。たくさんの情報が流れるSNSでは、瞬間的に「すごい!」と感じる、いわゆる「映える」という形容詞が価値観の一つとして定着しています。 さて、自然観察園で映える写真を、と考えてみると一体何を撮ればよいでしょうか? 最近は猛暑が続いていますので、例えば「植物につく水滴」なんて涼し気で良い

何に巻き付く? ヤブガラシのスマートな生存戦略

はじめに秋も終盤。そろそろ大掃除を計画する方も多いのではないでしょうか? 自然観察園ではボランティアの皆さんとゴミ拾いや樹木の剪定など、「整備活動」という名の大掃除をしています。 整備活動の目的は大きく2つです。 しかし、2つの目的が時として相反することがあります。その1例が今回の記事の主役「ヤブガラシ」です。 ヤブガラシはブドウ科の1種。 5枚一組の複葉をもつ、つる植物です。周囲に巻き付く性質があり、巻き付いた植物を枯らしてしまう程の勢いで繁茂することから「藪枯らし

落ち葉で陣取り合戦:ツバキの葉を分解する菌類たち

はじめに「キノコ」と聞いて何を思い浮かべますか? 炊き込みご飯、マイタケの天ぷら、マッシュルームのアヒージョ、マツタケの土瓶蒸し…キノコは私たちの生活の中で「食品」として馴染み深い存在です。なんだかお腹が空いてきましたね(笑) 残念ながら小学校の理科では登場しないキノコ。中学校でキノコを含めた菌類たちを「分解者」として学びます。彼らは自然界で落ち葉や倒木、動物の死体などを分解する重要な役割を果たしています。 食べると美味しかったり、森の掃除屋さんとしての役割を持つ菌類たち