マガジンのカバー画像

105歩で生き物観察

35
浜松科学館自然観察園は地域の方々のお散歩ルート。歩道は端から端まで105歩。普通に歩けば1分足らずで通過してしまいます。 その1歩1歩にもたくさんの生き物がいて、関わり合い、科学…
運営しているクリエイター

#生態学

この枝を切り落とした犯人は誰?

前回の記事で、「小さな森での小さな出会い」という言葉を挙げました。 しかし、いきなり生き物と出会えと言われても、どこをどう探せばいいのか困ってしまうと思います。 今回は「小さな出会い」に出会うコツをご紹介します。 今の時期、自然観察園の歩道にはたくさんの枝が落ちています。 拾い上げて見てみると、どの枝も青々とした葉と、ドングリが付いていました。 葉やドングリの形から、コナラの枝と分かりました。 つまり、①新鮮で、②ドングリの付いた、③コナラの枝だけがたくさん落ちているので

「ギザギザ」と「ツルン」、葉っぱの形を観察してみた

今年の夏は特に暑かったですね! 浜松市は日本の歴代最高気温に並ぶ「41.1℃」を記録し、話題になりました。 さて、太陽光が降り注ぐ中、植物たちはその光を葉で受け止めて、「光合成」しています。 光合成とは光エネルギーを利用して、水と葉から取り込む空気中の二酸化炭素を材料に炭水化物(食べ物)を作ること。 この強い日差しも、植物にとっては無くてはならない資源なのですね。 さて、今回は光合成のメイン工場である葉の形に注目してみましょう。 下に自然観察園に生える「コナラ」と「ク

優雅に舞う毒蝶ジャコウアゲハの影響力

10月のある日、秋の空気を感じながら自然観察園を歩いていると、目の前を黒色の蝶ジャコウアゲハがふわりふわりと横切りました。 葉にとまった個体を観察すると、翅や胴体に赤い斑点があり、とても鮮やかな外見です。 それにしても、間近で注視しても全く逃げる素振りがありません。 自然観察園には、ヒヨドリやシジュウカラなど蝶を食べる捕食者がいるにもかかわらず、飛び方然り、ずいぶんと気の抜けた様子です。 実は、ジャコウアゲハは体内にアリストロキア酸という猛毒をもつ毒蝶なのです。 ジャコ

アリの巣に居候するアリヅカコオロギの話

先月と比べて、電気代・水道代がちょっと高い。 冷蔵庫の食料の減りもはやい。 そして他人のいる気配がする! 家には家族しかいないはずなのに…。 ホラー小説のような話ですが、これは実際に筆者が自然観察園で目撃した事件なのです。 観察園を散策中、足元のコンクリートブロックを裏返すとトビイロシワアリの巣がありました。 アリ達は大騒ぎ。何十匹ものアリが縦横無尽に動き回っています(アリさん、ゴメンナサイ!)。 その数十匹はいるトビイロシワアリの中で、1匹だけ変な昆虫を発見しました。

冬に全滅してしまうけれど、毎年日本へやってくる開拓者:ウスバキトンボの話

近頃すっかり肌寒くなってきましたね。 空も高く、秋真っ盛りといったところです。 自然観察園の様子も季節とともに変わってきました。 落葉樹の葉の色は濃い緑色から赤色や黄色がかり、紅葉の兆しがあります。 サクラは、いち早く落葉がはじまっています。 昆虫に注目してみると、9月まで自然観察園の周りやサイエンスパークでたくさん飛んでいたオレンジ色のトンボは姿を消してしまいました。 このトンボこそ今回の主役、「ウスバキトンボ」です。 ウスバキトンボは、市街地でも見られるとても身近な

ネコとヒトの「見え方」の違いから「生き方」の違いが見えてくる話。

仕事がいつもよりも早く終わり、「ちょっと時間が空いたなぁ」というある日の夜、懐中電灯を持って自然観察園を歩いてみることにしました。 もしかしたら昼とは違った夜の世界が広がっているかもしれません。 クロちゃんとの出会い少し恐々自然観察園に入ると、ジッとこちらを睨む黒猫に出会いました。 猫の顔に懐中電灯の光が当たると、眼がランランと輝きます。 これまで一度も見かけたことがない黒猫との出会い。 ※ここでは、クロちゃんと呼びましょう。 やはり私の知らない自然観察園がそこにありま

「おしっこ」から脊椎動物の進化をみてみよう。

皆さん、今回のテーマは「排泄物」です。 「糞」「おしっこ」が連発しますので覚悟してください(笑) 自然観察園を歩いていると、遊歩道のコンクリートの上にたくさんの鳥の糞が落ちていました。 白黒のいびつな円形。 朝、これが車のフロントガラスに付いていると、とても残念な気持ちになりますね。 糞の中にはボコボコとした植物の種子も含まれていました。 この白色の星型のように美しい造形物はセンダンという樹木の種子です。 秋から冬にかけて、センダンの樹には白色のチョコボールサイズの果実が

葉の裏で裏取引 ~クスノキの害虫を防除する意外な方法~

明けましておめでとうございます。 本年もよろしくお願いいたします。 大晦日から元旦にかけて寒波が到来し、本格的な冬がやってきましたね。 お身体には気を付けてお過ごしください。 自然観察園もすっかり冬で、生き物たちの気配も少なくなりました。 木々の葉は落ち、一年中葉をつける常緑広葉樹が目立つようになりました。 植物たちは寒空の下、温かい春を静かに待っています。 しかし、春が来たら来たらで展開したばかりの柔らかい葉を大量のイモムシたちにむしゃむしゃと食べられてしまうこともし

鼻がムズムズ…。けれど花粉は面白い!

そろそろスギ花粉の舞う季節がやってきますね。 今回は、花粉症の方には憎き存在、「花粉」に注目したいと思います。 そもそも花粉はどんな形? 植物の種によって花粉の形は違うの? そんな素朴な疑問を明らかにしていきたいと思います。 タンポポの花粉をみてみよう浜松科学館自然観察園を歩いているとセイヨウタンポポが咲いていました。 冬の茶色な景色の中で、鮮やかな黄色がとても映えます。 タンポポの仲間のほとんどは、春~夏に開花しますが、本種は一年中花を咲かせます。 通常、花には「

タンポポとナメクジの知られざる物語。

浜松市の中心地にある自然観察園は、ヒトと自然が関わり合い、その関係性を学び・考えることができる大切な場所です。 外来生物はどうして悪者?2020年の夏から毎月1回、自然観察園の整備をしています。メンバーは浜松科学館職員とボランティアの皆さん。活動内容はゴミ拾い、枝打ち、立ち枯れ・小木の伐採等など多岐にわたります。中学生からシニアの方まで幅広い年齢層が有志で集まり、無理のない範囲で和気あいあいと実施しています。 「自然観察園を利用する人々が気持ちよく訪れられるように」「浜松

かなりシビアな昆虫と菌の共生関係。

街路樹でモンパキンを探してみよう自然観察園にも植えられているサクラ。 今は葉が落ち、硬い冬芽の中で小さくまとまった蕾や葉が暖かい春を待っています。 サクラにはソメイヨシノ、オオシマザクラ、ヤマザクラなど色んな種があります。 どの種にも共通して茶色や黒色のフェルトのような膜が枝や幹の一部を覆っていることがあります。 下の写真は、浜松市内の公園で撮影したものです。 触ってみるとけっこう硬め。 樹皮にぴったりとくっついています。 試しに剥がしてみると、ペリペリと簡単にめくる

生き物の名前を知ると、モノクロな世界に色が付く。

生き物の名前を知ると、モノクロな世界に色が付く浜松科学館自然観察園の身近な生き物や、生き物同士のかかわりをご紹介している本アカウント。開始して半年が経ち、フォロワーさんも100名を越えました。本当に有難いことです。筆者としましても、とても励みになります。お礼申し上げます m(_ _)m さて、先日「身近で気になる野鳥ランキング Best50」がnote編集部の今日の注目記事に選ばれました。多くの方々の目に触れることとなり、とても嬉しく思っています。 野鳥然り、生き物の名前

「色」と「食」で、春を楽しむ。

少しずつ暖かくなってきましたね。3月5日は啓蟄(けいちつ)。生き物たちが蠢(うごめ)きはじめる季節です。モノクロな冬から、色とりどりな春へ向けて、生き物たちは変化しはじめています。 今回は、植物たちの「色」に注目してみましょう。 「色」と「食」で、春を楽しむ自然観察園を歩くと、地面に「緑色」が目立つようになりました。 地に張り付くように葉を広げるセイヨウタンポポ。 若い黄緑色のヨモギ。 そして、ストロー状の葉を直立させるノビル。 これらは食べることができる野草です。中で

旬ではない生き物の観察 ~セミをめぐる冒険~

謎の卵を発見!先日、枯れ枝に謎のささくれがあることに気が付きました。これでもか!と不気味なほど大量のささくれが、①枯れ枝に、②等間隔で、③決まった形で付いています。これら3つの規則性があることから偶然できた傷ではなく、きっと生き物の仕業でしょう。 観察のために少しだけ枝を削ってみると… 中から細長い白色のカプセルが出てきました! おそらく、昆虫の卵です。 枯れ枝に深くまで傷を付けて、内部に産卵する昆虫。犯人は硬く長い丈夫な産卵管を持っているのでしょう。立派な産卵管。うーん