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105歩で生き物観察

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浜松科学館自然観察園は地域の方々のお散歩ルート。歩道は端から端まで105歩。普通に歩けば1分足らずで通過してしまいます。 その1歩1歩にもたくさんの生き物がいて、関わり合い、科学…
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#昆虫

この枝を切り落とした犯人は誰?

前回の記事で、「小さな森での小さな出会い」という言葉を挙げました。 しかし、いきなり生き物と出会えと言われても、どこをどう探せばいいのか困ってしまうと思います。 今回は「小さな出会い」に出会うコツをご紹介します。 今の時期、自然観察園の歩道にはたくさんの枝が落ちています。 拾い上げて見てみると、どの枝も青々とした葉と、ドングリが付いていました。 葉やドングリの形から、コナラの枝と分かりました。 つまり、①新鮮で、②ドングリの付いた、③コナラの枝だけがたくさん落ちているので

優雅に舞う毒蝶ジャコウアゲハの影響力

10月のある日、秋の空気を感じながら自然観察園を歩いていると、目の前を黒色の蝶ジャコウアゲハがふわりふわりと横切りました。 葉にとまった個体を観察すると、翅や胴体に赤い斑点があり、とても鮮やかな外見です。 それにしても、間近で注視しても全く逃げる素振りがありません。 自然観察園には、ヒヨドリやシジュウカラなど蝶を食べる捕食者がいるにもかかわらず、飛び方然り、ずいぶんと気の抜けた様子です。 実は、ジャコウアゲハは体内にアリストロキア酸という猛毒をもつ毒蝶なのです。 ジャコ

アリの巣に居候するアリヅカコオロギの話

先月と比べて、電気代・水道代がちょっと高い。 冷蔵庫の食料の減りもはやい。 そして他人のいる気配がする! 家には家族しかいないはずなのに…。 ホラー小説のような話ですが、これは実際に筆者が自然観察園で目撃した事件なのです。 観察園を散策中、足元のコンクリートブロックを裏返すとトビイロシワアリの巣がありました。 アリ達は大騒ぎ。何十匹ものアリが縦横無尽に動き回っています(アリさん、ゴメンナサイ!)。 その数十匹はいるトビイロシワアリの中で、1匹だけ変な昆虫を発見しました。

冬に全滅してしまうけれど、毎年日本へやってくる開拓者:ウスバキトンボの話

近頃すっかり肌寒くなってきましたね。 空も高く、秋真っ盛りといったところです。 自然観察園の様子も季節とともに変わってきました。 落葉樹の葉の色は濃い緑色から赤色や黄色がかり、紅葉の兆しがあります。 サクラは、いち早く落葉がはじまっています。 昆虫に注目してみると、9月まで自然観察園の周りやサイエンスパークでたくさん飛んでいたオレンジ色のトンボは姿を消してしまいました。 このトンボこそ今回の主役、「ウスバキトンボ」です。 ウスバキトンボは、市街地でも見られるとても身近な

冬が旬!擬態昆虫を探してみよう。

12月が近くなって、そろそろ冬といった感じですね。 自然観察園は、活動する生き物が減って少し静になってきました。 私たち哺乳類は体温調節が可能ですので、体温を一定に保ち、体を動かすことができます。 しかし他の動物たち、特に昆虫は、体温調節が出来ず寒い冬は身動きがとれません。 動けないことのデメリットの一つとして、捕食者から逃げられないことが挙げられます。 捕食者に食べられないように、昆虫たちはどの様な対策をしているのでしょうか? 昆虫たちの秘策、それは「擬態」です。

かなりシビアな昆虫と菌の共生関係。

街路樹でモンパキンを探してみよう自然観察園にも植えられているサクラ。 今は葉が落ち、硬い冬芽の中で小さくまとまった蕾や葉が暖かい春を待っています。 サクラにはソメイヨシノ、オオシマザクラ、ヤマザクラなど色んな種があります。 どの種にも共通して茶色や黒色のフェルトのような膜が枝や幹の一部を覆っていることがあります。 下の写真は、浜松市内の公園で撮影したものです。 触ってみるとけっこう硬め。 樹皮にぴったりとくっついています。 試しに剥がしてみると、ペリペリと簡単にめくる

旬ではない生き物の観察 ~セミをめぐる冒険~

謎の卵を発見!先日、枯れ枝に謎のささくれがあることに気が付きました。これでもか!と不気味なほど大量のささくれが、①枯れ枝に、②等間隔で、③決まった形で付いています。これら3つの規則性があることから偶然できた傷ではなく、きっと生き物の仕業でしょう。 観察のために少しだけ枝を削ってみると… 中から細長い白色のカプセルが出てきました! おそらく、昆虫の卵です。 枯れ枝に深くまで傷を付けて、内部に産卵する昆虫。犯人は硬く長い丈夫な産卵管を持っているのでしょう。立派な産卵管。うーん

あなたの「耳」はどこにある? コオロギ・バッタの耳の話

11月になり秋もますます深まってきました。 秋といえば様々な虫たちが鳴く季節 ― マツムシのチンチロリン、スズムシのリーンリーン、エンマコオロギのコロコロリリリー…網戸から聞こえる様々な種の鳴き声に秋を感じますね。 私たちにとって秋の風物詩である虫の声も、鳴いている当人(虫?)からすればオスからメスへのラブコール。 後世へ子孫を残せるかどうかの真剣勝負です。 今回は秋の虫たちが属するバッタ目※の昆虫を例にお話しようと思います。 ※目は生物を分類するときの階級です。大きい順に

科学館で「ヒアリ」を探した話

はじめに「ヒアリだ!」 自然ゾーンにアリの模型があります。この模型を見た多くの人は「ヒアリだ!」と言います。 残念、ハズレです。 (こんな大きなアリがいたら地球はアリの惑星になっていたかもしれません・・・) 正解は、日本に昔から生息する「トビイロケアリ」です。ヒアリと答えた人に「どうしてヒアリだと思いましたか?」と尋ねると「茶色いから」とのこと。 私たちの身の回りにはたくさんの在来種のアリ(以下、在来アリ)が生息していて、その中には茶色の種も多くいます。日常的にアリを観察