【オンライン版】身近で気になる昆虫展(後編)~昆虫たちの驚くべき色形・生態・進化~
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【オンライン版】身近で気になる昆虫展(後編)~昆虫たちの驚くべき色形・生態・進化~

浜松科学館では夏の企画展「身近で気になる昆虫展」を2021年7月20日~8月31日の期間開催しています。

・科学館へ行きたいけれど、遠方で行くことが出来ない
・企画展の予習・復習に

そんな皆さまへ向けて、企画展の内容を前後編でお届けします。

後編では、前編の「身近で気になる昆虫ランキング BEST50 」に登場する昆虫たちを主人公に、昆虫の色形・生態・進化の秘密をご紹介します。

※前編はこちらから↓

記事では、企画展に展示中のパネルの内容そのままに掲載します。
各テーマを最初から順に読んでも、下の見出しを参考に興味のあるテーマを中心に読んで頂いても大丈夫です。

それでは、受付で虫メガネを受け取ったら「身近で気になる昆虫展」の始まりです。

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はじめに

本日は「身近で気になる昆虫展」にお越しくださいましてありがとうございます。

「昆虫展」と聞くと、数千点の昆虫標本がずらりと並び、生きたカッコいい海外産のカブトムシがいたり、大きな模型があったり、そういった光景を想像されるかもしれません。
大変申し訳ありませんが、本企画展ではそれらは一切ございません。

もちろん、図鑑に載った海外の昆虫たち、デパートで売られているカブトムシ・クワガタムシも昆虫です。
しかし、それら有名な昆虫たちと、私たちが日常生活で出会う昆虫たちとでは、大きな違いがあるように思います。

アパートの廊下や、通勤・通学路のブロック塀などにいる昆虫を見つけて、「この虫の名前はなんだろう?」と思ったことはありませんか?
こんな色の昆虫がいたんだなぁ。
何て名前なのかな?
図鑑で調べるほどではないけれど、ちょっと気になるなぁ。

この企画展では、そんな「身近で気になる」昆虫たちが主役です。

・私たちの身近にもこんなに面白い色形の昆虫たちが生きていること
・身近な昆虫にも面白い進化・生態の話がつまっていること

をお伝えします。

昆虫が嫌いじゃない方は、昆虫の種名を知ることで、興味・関心がわいてくるかもしれません。
昆虫が嫌いな方でも、身近な昆虫を知ることで、全ての昆虫を怖がるのではなく「メリハリをつけて怖がること」ができるかもしれません。

この会場を出た時、新たに1種でも昆虫の名前を覚えていただけたら、こんなに嬉しいことはありません。


日本の有名な昆虫たち

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日本の昆虫と聞いて、皆さんは何を思い浮かべますか?

家の中に出るゴキブリ、血を吸う蚊など不快な昆虫たちを思い浮かべるかもしれません。
また、カブトムシ、オニヤンマ、ゲンゴロウ、トノサマバッタなど知名度の高い昆虫の名前も挙げられると思います。

海外で同じ質問をすると、やはり大半の人々はゴキブリ、蚊など不快な昆虫の名前を挙げることが多いそうです。
特に欧米では、昆虫を農作物や病気と関連づけるイメージが強くあると考えられています。
例えばイギリスの歴史ある自然史博物館は、バックヤードに膨大な数の昆虫標本を収蔵する一方で、表の展示では不快害虫しか紹介していません。

日本では、一年を通じて昆虫に親しむ文化があります。
春に多くの学校でモンシロチョウやアゲハチョウ(アゲハ)を飼育して、卵・幼虫・蛹・成虫と成長する様子を観察します。

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初夏にはゲンジホタルの光る様子がニュースで流れます。

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夏にカブトムシやクワガタムシを飼育したり、セミを採集したりする家庭もあるのではないでしょうか。

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そして秋には鳴く虫を愛でてきました。

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昆虫が登場する様々な童謡も歌います。
トンボ:『とんぼのめがね』『赤とんぼ』
チョウ:『ちょうちょう』
ホタル:『蛍の光』
秋の虫(マツムシ・スズムシ・コオロギ・クツワムシ・ウマ
オイ):『虫のこえ』

私たち日本人は自身では気が付きませんが、世界的にも昆虫に親しみをもつ民族なのかもしれません。


海外の有名な昆虫たち

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それでは、海外の昆虫はどうでしょうか?
ヘラクレス、ネプチューン、コーカサス、ゾウカブトなど大きくてカッコいいカブトムシを思い浮かべるかもしれませんね。
これらはカードゲームやテレビアニメでもモチーフにされたことがあり、子供から大人まで大人気の昆虫たちです。

他にもハナムグリや、トリバネアゲハ、バイオリンムシ、テナガカミキリ、タマムシの仲間など巨大で美麗、そして特殊な形の昆虫たちが、東南アジアや中南米を中心とした熱帯雨林に生息しています。

せっかく海外の大きな昆虫たちが目の前にいますので、企画展をより楽しむために昆虫の基本的な体の構造や、虫メガネの使い方を覚えてみましょう。

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虫メガネで昆虫の体を観察しよう

昆虫の体は、3つのパーツ:「頭部」「胸部」「腹部」からなり、3 対計6本の脚が生えています。

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頭部には、触ったり臭いをかいだりする「触角」、食べるための「口(口器)」、見るための「目(複眼)」があります。
胸部からは、4 枚の翅と6 本の脚が生えています。腹部には、呼吸をするための穴「気門」や、外からは見えませんが栄養を消化吸収するための消化器官があります。


虫メガネは手で持って目の前(顔から15 ~ 20cm)に固定しましょう。
そのまま観察したい昆虫が入った標本箱に近づき、焦点が合い、くっきりと見える位置まで体ごと近づいてみましょう。

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虫メガネには、倍率が3 倍と6 倍の2 種類のレンズが付いています。
観察する物の大きさに合わせて使い分けてみてください。

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実際に虫メガネの3 倍レンズで、色々な昆虫の触角の形を比べてみましょう。
すると、カブトムシの触角は口元にちょこんとあって、蝶の仲間はマッチ棒のような棍棒型、カミキリムシは細長い、などグループによって形が全く違うことが分かります。

今度は蝶の翅や、カミキリムシの目を6 倍レンズで観察してみましょう。

蝶の翅の模様は点々で描かれているのが分かります。これは「麟粉」と呼ばれる構造で、雨水をはじいたり、空気の流れを調整して羽ばたきやすくしたりする機能があります。

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カミキリムシの目も、鱗粉と同じように小さな点々で構成されていることが分かります。
多くの昆虫の目は、沢山の小さな目が集まった「複眼」でできています。

虫メガネで拡大することで、目視では分からなかった特徴を観察でき、なぜこうなっているのだろう?とより深く想像することができます。

この企画展では虫メガネを使って思う存分じっくりと、標本を観察してみてください。

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生活の中の昆虫たち

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昆虫と聞くと、この部屋で見てきた有名な昆虫たちを想像すると思います。
しかし、私たちの生活の中で出会う昆虫は全く別にいるのではないでしょうか?

◇ 家の畑の苗や樹の葉に付いた大きな蛾の幼虫(セスジスズメ)

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◇ 公園のトイレで出会い、私たちをびっくりさせる地球外生命体のような昆虫(カマドウマの仲間)

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※開けた様子の詳細は… 現地でお楽しみください!

◇ 夜の家の灯りに引き寄せられて網戸に張り付いたコガネムシの仲間や蛾の仲間(コフキコガネなど)

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「うわぁ!何だこの虫!」
と強い印象を残す、名も知られぬ昆虫たち。
今回の企画展はそんな「身近で気になる昆虫」がテーマです。

彼らにも、「カブトムシ」のように、人間からプレゼントされた種名があります
彼らにも、「ヘラクレスオオカブトの角」のように、カッコいい・面白い見どころがあります

一般的にイメージしがちな昆虫展はここまで。
この部屋から出たら、身近で気になる昆虫たちの世界が広がっています。


身近で気になる昆虫ランキングベスト50

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このランキングは浜松科学館の生き物博士が個人的に運用しているTwitter アカウントの情報をもとに作成しました。同アカウントにて「名前を知ると興味・愛着が生まれるかも?」をモットーに、「なんていう虫?」「この虫の仲間はなんだろう?」という写真付きのツイートなどを拾い上げ、回答しています。

例えば、下の画像は実際にTwitterで挙げられた昆虫たちです。
こんな昆虫たち、見たことはありませんか?

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これまでに、上の写真のような昆虫に関する質問に約2万件お答えしてきました。そのデータをもとに、回答が多かった上位50 種をまとめました。

※「身近で気になる昆虫ランキングベスト50」の内容はこちらから↓

ランキングの中には、モンシロチョウやカブトムシなどは含まれていません。
なぜなら彼らの種名はもともと有名で、「この虫なんだろう?」と気にはならないからです。
つまり、スマホで写真が撮れるほど「身近」で、種名が「気になる」昆虫のランキングになっているのです。

さて、皆さんがこれまでに出会い、気になっていた昆虫はいるでしょうか?


なぜ昆虫は多様なの?

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地球上に存在する生き物は、2009 年時点で約190 万種が確認されています。
そのうち昆虫は過半数を占める約100 万種が記載され、分類群の中で最も多様な種数を誇っています。

次から3つのテーマでは、「なぜ昆虫はこんなに多様に進化したのか?」を考えていきたいと思います。
昆虫の多様性を語るには、本が何冊あっても足りないくらい、そしてまだまだ明らかになっていない謎もたくさんあります。
ここではその一端を垣間見ていきます。

昆虫の進化について、昆虫たちは約4 億8 千万年前に地球上に現れ、エビやカニなどの甲殻類のグループから分化したことが分かっています。

生き物の進化の道筋を表す方法として、しばしば下の図のような系統樹が用いられます。
横軸が時間を表し、右へいくにつれて時間が進み新しい時代になることを意味します。
まず甲殻類と昆虫の枝が分かれ、時間とともに枝分かれが進み、細分化して多様化することが分かりますね。

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※参考:Misof et al. (2014) 

原始の昆虫は、翅を持ちませんでした(無翅昆虫)。
絶滅して、化石でしか観察できない種もいますが、現代も家の中に現れるシミの仲間は4 億3 千万年以上前に分化した翅をもたない原始的なグループです。
シミは、「お家の中の生きた化石」ということになりますね。

その後、4 億年前に翅を獲得し(有翅昆虫)、翅の形状を複雑化していきました。
また3 億5 千万年前には、成虫になる際に蛹を経る進化を遂げます。

この「翅の獲得」「翅の複雑化」「蛹」は、昆虫の多様化を語る上で欠かすことのできないキーワードです。
では、詳しく見ていきましょう。


成長すると軽くなる!? 体重の話

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私たちヒトは、大人になるにつれて身体が大きくなります。
では昆虫の場合はどうでしょうか?

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例えば、屋内に現れるシミという昆虫は、成長するにつれてヒトと同じように体重が重くなります。

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しかし、蛾の仲間のキイロスズメや、コウチュウの仲間のヒメマルカツオブシムシは、子供(幼虫)から大人(成虫)になると体重が軽くなります。

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このような成長過程と体重の比例・反比例の関係は、成虫の飛翔能力の有無が影響しています。

ご想像のとおり、飛ぶためにはできる限り体を軽くする必要があるのです。飛ぶ生き物というと鳥類が有名ですが、彼らは体を軽くするために老廃物を尿酸として出します。
尿酸は水に溶かさずに体内に貯蔵することができ、膀胱を削除することで体の軽量化に成功しています。

翅をもたない原始的な昆虫は、姿かたちをほとんど変えることなく成長します。
一方、翅をもつ新たに分化した昆虫たちは、ある程度、体を軽量化する必要があります。
※飛ぶ昆虫でも、不完全変態(蛹の状態を経験しない)の昆虫は主に成長に伴い体重が増えます。

飛ぶことには、外敵から逃げる、餌が豊富な場所へ移動する、結婚相手を探すなど、様々なメリットがあります。またこれまでたどり着けなかった場所を新たに開拓し、利用できるようにもなりました。

4.8 億年前、世界には翅をもたない昆虫しかいませんでした。
現在はというと、翅をもたない原始的な昆虫の種数は世界で約8 千種。昆虫全体の1%以下の超少数派になってしまいました。

翅の獲得や飛翔は、昆虫にとってまさに広い世界へ羽ばたく、多様化のきっかけとなる一大イベントだったのですね。

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シミの仲間は成虫の方が重いけれど…

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キイロスズメは幼虫の方が重い。


どんどん便利な形に!翅の話

約4 億年前に翅を獲得した昆虫たち。
飛ぶことができる昆虫たちの中で、現在も生き残っている最も原始的なグループは、カゲロウやトンボの仲間です。

彼らは翅をもつものの、翅を上下に開閉することしかできません。とまっているときは4 枚ある翅を閉じたとしても垂直に立てるだけで、翅2 枚分の空間を保ち続けなければなりません。

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その後登場したヘビトンボの仲間、蛾の仲間のキイロスズメ、カメムシの仲間のエサキモンキツノカメムシ、カミキリムシの仲間のシロスジカミキリなどの昆虫たち。
彼らは翅の上下運動だけでなく、折り畳むことができるようになりました。

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シロスジカミキリの翅を畳む動きを人形を動かしながら学んでみよう。

同じ種の昆虫の中でも、翅の形や折り目には若干の個体差があります。そして、より効率的で便利な翅の形をした個体ほど子孫を残しやすく、翅の形の進化も促されます。

「翅の折り畳み」も昆虫界では翅の獲得に匹敵するほどの画期的な進化でした。
薄くてもろい翅を小さく収納することで、小さな隙間や水中、土の中でも生活できるようになりました。

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生息環境の選択肢が増えたことは、昆虫種の多様化を促しました。また、昆虫たちの翅の構造は、人間社会の科学技術に活かされると期待されています。

例えば、腹部の末端にハサミをもつハサミムシの仲間は、腹部の可動域を広げてハサミを自由自在に扱うために翅を収納するスペースを極端に小さくしました。
この収納方法は工学的にも優れたもので、傘や扇子、人工衛星の太陽電池パネルの設計などに役立てられると注目されています。

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ハサミムシの翅を畳む仕組みは、まるで扇子のよう。
協力:斉藤一哉 氏(九州大学大学院芸術工学研究院)

過去4 億年にもおよぶ昆虫たちの命を懸けた飛翔実験の結果は、私たち人間社会へ恩恵を与えてくれるかもしれません。


子供と大人で好みが変わる!? 食べ物の話

子供の頃は嫌いな食べ物だったものが、大人になると好きになる。そんな経験はありませんか?例えば、コーヒー、野菜のおひたし、煮魚などが定番でしょうか。

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昆虫の世界では、子供(幼虫)と大人(成虫)で食の好みが同じ種と、ガラリと変わる種がいます。

例えば、カメムシの仲間のオオキンカメムシやアカスジキンカメムシは幼虫期、成虫期ともに植物の汁を吸います。

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一方、コウチュウの仲間のヒメマルカツオブシムシは、幼虫期は乾燥したタンパク質を、成虫期はキク科植物の花粉を食べます。同じくコウチュウの仲間のベニカミキリは、幼虫期は竹を食べ、成虫期は花の蜜や樹液を舐めます。

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幼虫と成虫の食べ物の好みの変化は、成虫になる時に「蛹」の段階を経験することで可能になります。

蛹の中では、成虫原基と呼ばれる成虫になるために必要な部分を残して、大部分を液体状に溶かしてしまいます。
この液体を再び固体に変換しながら、成虫の身体に造り変えていきます。身体の造り変えの際に、内臓の仕組みも変化し
て、内部器官、代謝なども更新されるのです。

100 万種以上いる昆虫種の中で、蛹にならずに成虫になるのは約16 万種、一方、蛹を経験するのは約90 万種で圧倒的多数派であることが分かります。

幼虫期と成虫期で食べ物が同じ場合、食べ物を巡って親子で争うことになります。また同じ食べ物を利用し続けるということは、食べ物は一年中入手可能なものに限られます。
蛹を経ることで、昆虫たちはこれらの問題の解決の糸口をつかみました。

幼虫と成虫で食べ物の好みを変えることは、種内競争を減らし、また食の選択肢を広げ、昆虫の多様化を後押ししたと考えられています。

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色々な種の昆虫マグネットをものに近づけてみよう。何が好きかな?


これってクワガタ?

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私たちは昆虫を、カゲロウ、クワガタ、カミキリムシ、カメムシ、チョウなど大雑把なグループで呼ぶことがあります。
このグループ名も、種を包括するより大きなカテゴリ:目、科、属などの名称が由来になっています。

生き物の体の色や形に法則性を見出し、人間が理解しやすいように整理してグループ分けする̶このような学問を分類学と言います。
近年では、分類の際に外見の色や形だけでなく、新たに遺伝子情報も加えられ整理されつつあります。

では、分類学ではクワガタの仲間(クワガタムシ科)はどの様に定義されているのでしょうか。
図鑑に記載されているクワガタを分類する上で重要な特徴を少しかみ砕いて書いてみると…

・腹部腹板は5つのパーツでできている
・触角の1 節目が長い

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何と!カッコいい大顎や、黒色の体色がクワガタを定義するわけではないのですね。
身近で気になる昆虫35 位のクロカミキリも大顎が発達して黒色なことから「これってクワガタ?」と多くの方から質問を寄せられますが、標本を観察すると確かに触角の形状がクワガタとは異なります。

ここでは昆虫の部位の中でも観察しやすい「触角の形」に注目して、クワガタかどうかを識別してみましょう。

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「これってクワガタ?」クイズです。

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こちらはクワガタっぽいですね。

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ではこちらは?触角の形を虫メガネで観察してみましょう。


ちょっと難しいメスのクワガタの見分け方

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昆虫採集で最初につまずくポイントは、クワガタのメスの見分け方(同定) かもしれません。

クワガタのオスには発達した大顎があり、大顎の形は種ごとに特有なため比較的同定しやすいのですが、メスは大顎が発達していないので、一見するとどの個体も同じに感じてしまうのです。

昆虫を同定する上で重要なのは、大きな色形の違いだけではありません。
体型や色ツヤ、脚の太さなど、一見すると連続的であいまいに感じる形質も、種を同定する上で重要なのです。

下の図では、身近なクワガタ4 種のメスの違いを比較しました。図を参考に、クワガタ同定マスターを目指しましょう!

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身近な昆虫を超拡大!

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「身近で気になる昆虫展」では、口、触角、脚、翅など昆虫の様々な部位を虫メガネ(3 ~ 6 倍)で拡大観察しています。
高い倍率で観察することで、目視だけでは認識できなかった構造に気づくことがあるかもしれません。

浜松科学館自然ゾーンの「でんけんラボ」には、最大で3万倍まで拡大して観察できる「電子顕微鏡」が設置されています。
ここでは電子顕微鏡で撮影した昆虫たちのミクロな秘密をご紹介します。

まずはカメムシの仲間のマルカメムシ。
体全体に光沢があって硬そうで、一見するとコガネムシの仲間のように思えます。

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しかし、頭部を拡大してみると口の形はストロー型。
これはカメムシやセミの仲間の特徴です。

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次はコウチュウの仲間のカメノコハムシの仲間。
彼らは「葉虫」の名前のとおり、植物の葉が大好物です。
脚の先を電子顕微鏡で拡大すると、細かい毛がびっしりと生えていることが分かります。
この微毛のおかげで、ツルツルとした葉の上でも自由自在に動き回ることができるのです。

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でんけんラボでは、定期的に観察会を開催しており、昆虫の微細構造の秘密に迫ることができます。
是非ご参加ください!


音を利用する昆虫たち

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バッタやコオロギの仲間は鳴き声で求愛することで有名ですね。「リーンリーン」と鳴くスズムシ、「チンチロリン」と鳴くマツムシなどは身近な秋の虫としてよく知られています。
それでは、夜の田んぼで「ビー―――…」と鳴く生き物の正体をご存知でしょうか?大人でもしばしば「これはミミズの声だよ」と言う方がいますが、ミミズは鳴きません。

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この鳴き声の正体は「ケラ」です。

土の中に棲み、前脚がモグラのようなシャベル型をしていますが、ケラも立派なバッタの仲間。この不思議な音も、オスからメスへのラブコールだったのです。

ケラを含むバッタの仲間は、翅をこすり合わせて音を出します。翅の構造は種によって異なりますが、基本的には片方の翅にはギザギザが、もう片方には弾くための突起があります。

求愛のために鳴くバッタやコオロギのオスたち。
彼らは、ラブコールをより遠くへ届けるために、様々な工夫をしています。

例えばケラのオスは、鳴くために特別な音響部屋を用意します。ケラのオスは一定空間の巣穴を掘り、その中で鳴くことで声を共鳴させて、音の大きさを増幅させるのです。
ケラは様々な種が世界的に分布していますが、種ごとに鳴き声の音程は異なり、その鳴き声を増幅させるのに適した広さの部屋を用意することが知られています。

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ケラを模したボイスレコーダーを筒の中に入れると…

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筒の深さによって音の大きさが変わります。

より適した形の音響部屋を用意できたオスは“モテて” より多くの子孫を残します。
その結果、この行動が人間の伝統技術のように世代を越えて進化・伝播しているのですね。

ちなみに、昆虫が鳴く目的は求愛だけではありません。
例えば、カミキリムシの仲間のミヤマカミキリは胸部の凹凸があるパーツを擦り合わせて鳴きますが、これは求愛ではなく、敵に襲われた際に威嚇のために鳴いています。

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カミキリムシの鳴く仕組みは楽器のギロと同じです。


モノマネ上手な昆虫たち

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「擬態」という単語、一度は聞いたことがあると思います。
しかし、説明しようとするとなかなか難しいですね。
学術的にも議論の余地がありますが、一般的には「ある生き物が何かに似せて、それを見つけるものをだますこと」とされています。

何をモデルにするかによって、擬態をいくつかの種類に分けることができます。
ここでは代表的な3種類の擬態をご紹介しましょう。

① 隠蔽型擬態(いんぺいがたぎたい)
隠蔽型擬態は、「周囲の環境を真似る」擬態です。

枝を真似るナナフシや、枯葉を真似るコノハチョウなど、一番オーソドックスで想像しやすい擬態なのではないでしょうか。
隣でご紹介したアケビコノハを例にすると、3 者関係は横の絵のようになります。
「アケビコノハ」が「枯葉」に似せて、捕食者である「鳥」をだまします。

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何匹の蝶・蛾が隠れていますか?

② ベイツ型擬態
ベイツ型擬態は、「危ない・不味いモデルを真似る」擬態です。毒をもつ蝶を無毒な蝶が真似たり、毒針をもつハチをカミキリムシが真似たり、擬態する者は危険な生き物をモデルにしています。
「危ない・不味い」生き物をモデルにしますので、ハチの黄色と黒色の縞々など、真似る側も目立つ色形になることが多いです。

隠れることを目的とした隠蔽型擬態とは逆の発想ですね。

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③ ミューラー型擬態
ミューラー型擬態は「危ない・不味い生き物同士で真似し合う」擬態です。

毒針や口で刺すハチやアブの仲間は、黄色と黒色の縞模様をしていることが多いです。
黄色と黒色の縞模様と言えば、危険なイメージがありますね。

海外の蝶に注目すると、複数種の毒蝶が、翅の模様を互いに似せる例が報告されています。

実際に標本を見てみると、「他人の空似」と言うには無理があるほど似通っていますね。
互いに毒を持ち、このように翅の柄を統一することで、天敵である鳥へ強いアピールになると考えられています。

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物事のシンプルな事象を説明する際に、「生きるか死ぬか、食うか食われるかだ。」と自然界の法則を例に挙げられることがあります。


しかし実際は「生きるか死ぬか」「食うか食われるか」の中にも擬態のように「擬態する者」「モデル」「だまされる者」という3者関係が存在し、複雑なかけ引きが繰り広げられているのですね。

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毒で身を守る昆虫たち

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昆虫は体が小さく、他の動物から食べられてしまうことが多いです。
そのため、食べられないように周囲の環境に「擬態」して隠れたり、毒で身を守ったりすることがあります。

身近な毒のある昆虫として有名なのはイラガという蛾の仲間の幼虫、いわゆる「電気虫」です。
カキ、ウメ、サクラなどの葉の裏にトゲのある幼虫がびっしりと張り付き、気づかずに触れてビリっと痛みが走る。
これまでに経験した方も多いのではないでしょうか。

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幼虫は「ヒスタミン」というタンパク質系の毒をもち、外敵が触れた瞬間に針から毒を注入します。
痛みとともにかぶれや発疹が出ることがありますが、命にかかわることはありません。

より強力な毒をもつのが、ツチハンミョウの仲間です。
彼らは外敵に襲われると「カンタリジン」と呼ばれる黄色の液体を体節の間から出します。
この液体にふれると、火傷のような水ぶくれができてしまいます。

カンタリジンの致死量は大人に対して10 ~ 80 mg と言われています。
海外のツチハンミョウの仲間を対象にした研究では、メスの成虫1 匹から10 mg 以上のカンタリジンが検出されていますので、たった数匹でヒトを死に至らしめることができるのです。

これだけ聞くと、昆虫は「毒のある怖い生き物」とイメージしてしまいがちになります。
しかし実際は、昆虫の中でも毒のある種はごく一部です。
今回ご紹介している身近で気になる昆虫50 種の中で毒のあるのは、イラガの仲間の幼虫とツチハンミョウの仲間だけです。しかも、触れないように気を付けるだけで、それらの害を防ぐことができます。

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また、毛虫には危険なイメージがありますが、国内約5000種いるとされる蝶・蛾の幼虫のうち、イラガの仲間のように毒があるのは全体の約2 % しかおらず、圧倒的な少数派です。

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むやみに全ての昆虫を怖がるのではなく、害のある昆虫を覚えておくなど正しい知識をもって、正しく怖がるようになりたいですね。

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ヒトの致死量をイメージした天秤。
トラフグ、トリカブトを食べると死んでしまいます。

図2

ツチハンミョウは5匹食べると致死量に達します。
※4匹までなら食べても問題ないわけではありません。ツチハンミョウを見つけても絶対に食べてはいけません。

これは蝶?これは蛾?

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「蝶と蛾の違いは?」と質問されることがあります。
その答えは「あいまいです(;^_^A」というのが正直なところです。

蝶と蛾は、色や形など形態的な特徴で分けられることが多いですが、例外がたくさんあります。

◇ 色がカラフルなのが蝶、地味なのが蛾?…でも色鮮やかな蛾もいる
  例:ウンモンスズメ、ビロードハマキ
◇ 翅を閉じてとまるのが蝶、開いてとまるのが蛾?…でも翅を開いてとまることがある蝶もいる
  例:アオスジアゲハ
◇ 昼間活動するのが蝶、夜活動するのが蛾?…でも昼間活動する蛾もいる
  例:オオスカシバ、カノコガ、ホタルガ
◇ 触角の先が太いのが蝶、細いのが蛾?…でも触角の先が細くなる蝶もいる
  例:セセリチョウの仲間

蝶と蛾はチョウ目という同じグループに属しています。
分類学的には、チョウ目の中の特定のグループを蝶、その他の種を蛾ということができます。
しかし、上述のとおり蝶グループの中にも形態的には蛾の特徴をもつものがいます。

つまり、何を蝶・蛾とするかは語る人の定義次第ということです。

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肉食性昆虫たちの食べるための進化(ウスバカゲロウの仲間)

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生き物にとって「食べること」は生きる上で最も重要な行為の一つです。

私たちヒトは、穀物や野菜・肉類など様々な食材を食べる雑食性です。口をあけて歯を観察してみると、手前に食材を噛みちぎるための尖った歯が、奥にそれらをすり潰すための平らな歯が配置され、食材を効率良く食べられる構造になっています。

昆虫の中には、特定の生き物を食べる偏食家たちがいます。
それらの偏食家たちの驚くべき形態的な進化を観察してみましょう。

まずは幼虫が「アリジゴク」として有名なウスバカゲロウの仲間です。
アリジゴクは、すり鉢状の巣を作って、そこに落ちるアリやダンゴムシなどの小さな動物を捕獲して食べます。
食べる際は、大きく発達したキバを獲物に刺して消化液を注入します。
消化液によって液体状になった体内組織をキバの先端から吸引するのです。

キバを電子顕微鏡で観察すると、大顎に溝があり、そこに小顎がはめ込まれていることが分かります。
大顎は獲物の捕獲用、小顎は消化液の注入・吸引用です。

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昆虫の凡例としてバッタの口の構造と比べてみると、アリジゴクの口が、いかに特殊かがわかると思います。

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昆虫たちの体の構造は基本的にどのグループも共通です。
その共通のルールの中で、アリジゴクのキバのようにそれぞれの生活様式に合わせて形態を変化させているのですね。

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生きたウスバカゲロウの幼虫も展示中。タイミングが良ければアリを食べる様子を見られるかも!?


肉食性昆虫たちの食べるための進化(マイマイカブリ)

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アリジゴク(ウスバカゲロウの仲間の幼虫)はアリやダンゴムシなど小さな動物を食べる肉食性でした。
マイマイカブリも肉食性ですが、特にカタツムリを専門に食べる偏食家として知られています。

頭部や胸部の形を見てみると異様に細長いです。
アリジゴクが特殊なキバをもっていたように、マイマイカブリの体型もカタツムリ専門という特殊性が反映されていそうです。

日本全国に分布するマイマイカブリの体型を比較すると、地域によってバラつきがあることに気が付きます。

・佐渡島に分布する個体は「首が太く短い」
・本州本土に分布する個体は「首が細く長い」

なぜこのような違いがあるのでしょうか?

実はマイマイカブリの首の形は、その地域に分布するカタツムリの殻の大きさに影響を受けることが分かっています。

マイマイカブリは、小さなカタツムリを襲う時は大顎で殻を割り、むき出しになった肉をむさぼります。
そのため小さなカタツムリが分布する地域では、殻を割りやすいように首が太く大顎の力が強い個体が有利になります。

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一方、大きなカタツムリを食べる場合は穴に頭を突っ込んで襲います。
大きなカタツムリが分布する地域では、頭を突っ込みやすいように首が細長い個体が有利になります。

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現在のマイマイカブリの首の形の地域差は、カタツムリの殻の大きさの地域差に影響を受けているのですね。
マイマイカブリの形態のように、複数の生き物が相互作用しながら進化することを「共進化」と言います。

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餌の形に合わせて、自分の体の形も変化させるマイマイカブリ。
「意地でもカタツムリを食べるぞ!」という意気込みを感じますね。


タマムシ色の秘密

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美しい昆虫の代表として、よくタマムシが挙げられます。
日本史の教科書にも東大寺正倉院の玉虫厨子の材料として登場しますね。

じっくり観察してみると、角度によって緑色に見えたり、青色に見えたり、色が変化するのが分かります。
「なぜタマムシは角度によって色が変わるのか?」
その秘密は、翅の表面構造にあります。

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そもそも私たちヒトは、物が反射する光を目でとらえることで物を認識します。白色に見える太陽や蛍光灯の光には、赤色から青紫色まで様々な色の光が混ざっています。

ではタマムシのどこが特別なのか、アゲハチョウ(アゲハ)と比較してみましょう。

アゲハの場合、翅には黄色以外の光を吸収する部分と、全ての色の光を吸収する部分があります。
そのため黄色の光だけ反射する部分は黄色に、全く光が反射しない部分は黒色に見えるのです。

一方のタマムシは、翅の表面に何枚もの薄い膜が重なっています。
タマムシに向かった光は、膜の表面で反射する光、膜の奥で反射する光など、複数に分かれます。
そして、それらの光が再び重なり合うと、特定の色が強められるのです。
どの色が強められるかは、膜の厚さや枚数によって変わるので、見る角度によって色が変化するのですね。

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タマムシの翅のように、複数の光が干渉しあってできる色を「構造色」と呼びます。
身近な人工物では、CD やシャボン玉などが構造色の特徴をもっています。

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構造色は食器やギター、ドレスなど、人間社会のデザインに活かされています。

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翅に構造色をもつ美しいモルフォチョウ。
光をあてる角度によって、輝く色が変わります。

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モルフォチョウの構造色を再現したエレキギター(協力:帝人フロンティア)


農作物を食べちゃう昆虫たち
農作物を食べちゃう昆虫を食べちゃう昆虫たち

ツマグロヒョウモン、キアゲハ、ゴマダラカミキリ、キボシカミキリ、セマダラコガネ。
種名は聞いたことがなくても、姿をみると家庭菜園をしている人は「あ!庭にいた虫だ!」と顔をしかめることでしょう。
これらの昆虫は、植物の花、葉、茎、根などを食べる「害虫」として知られています。

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困った存在ではありますが、昆虫からするとこれまで自然界で食べていたものが豊富にある場所(畑や庭)を見つけて棲み、増えているだけ。
特定の種類の植物だけが生えているという状況は、自然環境では異常なのです。

とは言いつつも、作物の収穫量を増やしたり、品質を良くしたりするためには害虫の発生をできるだけ抑える必要があります。

かつては害虫駆除のために強力な殺虫剤を用いることが普通でしたが、それらの中には残留性が高かったり、効果が強すぎたりして、ヒトを含む周辺の生き物に悪影響を与えてしまう事例が報告され、使用が禁止されるものもありました。

また、強力な殺虫剤は一時的に効果があるようにみえても、害虫を食べてくれる「益虫」も殺してしまい、結果的にさらに害虫が増えてしまうこともあります。

「身近で気になる昆虫ランキング」の中で有名な益虫は「クサカゲロウの仲間」です。
名前に「カゲロウ」とついていますが、分類学上はウスバカゲロウと同じアミメカゲロウ目に属します。
クサカゲロウの幼虫は、葉や枝の上を歩いて、アブラムシなどの小型の昆虫を好んで食べてくれます。

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農業を行う上で、全ての昆虫が害虫という訳ではありません。
自然環境へ負荷を与え過ぎず、上手に付き合っていくことが大切です。


分布拡大中!外来生物

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会場内で観察してきた昆虫のほとんどは、もともと日本に生息していた「在来生物」です。
一方でここに並んでいる昆虫たちは、人間が他の場所から運んできた、もしくは運ばれてきて定着した「外来生物」です。

外来生物たちはその環境に突然に持ち込まれた生き物です。
もちろん慣れない新天地で生きなければならないので、8 割程度の外来生物種は定着できずに絶滅してしまいます。
しかし、残りの2 割程度は定着・増加してその土地の生態系のバランスを崩してしまうことがあるのです。

例えばアオマツムシの大きな鳴き声は、他の秋の虫の声をかき消してしまい、在来昆虫たちの求愛機会を減らしてしまうことが危惧されています。
肉食性のヨコヅナサシガメはチョウ目の幼虫など在来の昆虫を、キマダラカメムシやラミーカミキリ・アカボシゴマダラなどは在来の植物を捕食してしまうことが危惧されています。

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アカボシゴマダラ(本州亜種)は、日本の国蝶に指定されているオオムラサキや、その近縁種であるゴマダラチョウと同じエノキの葉を幼虫期に食べるため、餌をめぐる種間競争が起こるのではと問題視されています。

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では本州のアカボシゴマダラの起源はというと、飼育していた中国大陸産の個体が逃げた、もしくは故意に逃がした可能性が高いと言われています。野に出た外来生物たちは、新天地で生き抜くしかありません。外来生物問題の悪者は、外来生物ではなく、私たち人間なのです。

これ以上外来生物の分布を広げない、新たな外来生物を生まないためには、私たち一人一人の行動が大切です。
野外で活動した後は靴の泥を落としたり、衣服に草の種子や昆虫などが付いていないか確認したりして、生き物の移動をしないよう心がけましょう。
また一度飼育した昆虫などの生き物は、野外へ返さず、責任をもって死ぬまで飼育するようにしましょう。


身近で気になる昆虫を調べよう!

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このスペースでは日常生活で出会った気になる昆虫を同定することができます。
生きた昆虫、昆虫標本、昆虫の写真などお持ち込みください。

まずは種名を知りたい昆虫が「身近で気になる昆虫ランキング」の50 種に含まれているどうか確認してみてください。
Twitter 上で昆虫の種名を尋ねる質問ツイート約20,000 件の内、全体の約半分、約9,700 件の回答がこの50 種に集中しています。

ランクインしていなさそうな場合、設置されている図鑑を自由に使って調べてみましょう。
図鑑でも分からなければ、科学館のスタッフにお声がけください。
直ぐにお答えできない場合もあるかもしれませんが、一緒に調べてみましょう!

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(改めて)身近で気になる昆虫ランキング ベスト50

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ここまで、身近で気になる昆虫50 種を見てきましたが、皆さんがこれまでに出会ったことがある昆虫はいましたでしょうか。

ちなみに、冒頭で挙げた昆虫たちの種名は下記のとおりです。

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「うわ!何この蛾!」から「おお!ウンモンスズメ!」へ。
種名を知ると、ちょっと興味関心や愛着がわいてくるかもしれません。


おわりに

企画展の冒頭でも触れたとおり、「昆虫が嫌い」という方もいらっしゃると思います。
実際に近年、都市化が進む先進国で昆虫嫌いの方は増えています。

一方で昆虫たちは、私たち人間社会に大きな恩恵をもたらしています。

ハサミムシの翅の開閉は宇宙工学へ大きなヒントを与え、タマムシの構造色は日用品のデザインに活かされています。
チョウの仲間やハチの仲間は、花から花へ花粉を運んで農産物全体の作物種約75%、収量約35%を受粉させる作業を担い、クサカゲロウは害虫のアブラムシをせっせと駆除してくれます。

ここで登場した昆虫たちだけでも、私たち人間へとても大きな恵みをもたらしてくれています。
地球上には、未知もしくは研究がされていない昆虫たちがたくさんいます。
それらは、私たちの生活を豊かにしてくれる可能性をもつ財産と言えるでしょう。

このまま昆虫嫌いの人が増えてしまったとしたら、昆虫の研究や、昆虫を含む自然環境への保全が行われなくなり、私たち人間の潜在的な財産が無くなってしまうかもしれません。

今年発表されて話題となったある研究論文では、「なぜ昆虫嫌いな人が増えているのか?どうすれば減らせるのか?」を心理学的なアプローチで解明するために、日本人1万3千人を対象にアンケートを実施しました。

その結果、次のようなことが分かりました。

・野外よりも屋内で出会う昆虫に嫌悪感を抱く
・子供の頃に自然の多い場所で育つと昆虫の同定能力が増す
・昆虫の同定能力が高いと、ゴキブリは嫌い、他の昆虫は嫌いじゃないなど、昆虫の嫌悪感にメリハリが付く

これらの結果は、そもそも都市部では昆虫と出会う頻度が減り、「目の前の昆虫が何者か分からない」「分からないものは怖い」という心理が働いていることが原因と考えられます。

そんな方は、是非「身近で気になる昆虫ランキング」で種名を調べて、名を知らぬ昆虫たちを「見ず知らずの隣人」から「見知ったご近所さん」に変えていってみてください。

本企画展をとおして、昆虫を嫌いじゃない方が昆虫に興味・関心をもち、昆虫嫌いの方が昆虫の嫌悪感にメリハリをつけてくれたら嬉しいです。

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謝辞

本企画展では以下の方々にご協力いただきました。
厚くお礼申し上げます。

 北杜市オオムラサキセンター
 帝人フロンティア
 山﨑自然科学教育振興会
 斉藤 一哉 氏(九州大学大学院 芸術工学研究院)
 小粥 敏弘 氏
 多々良 明夫 氏(静岡県立農林環境専門職大学)
 長澤 亮 氏
 岩田 泰幸 氏(公益財団法人文化財虫菌害研究所)
 小長谷 達郎 氏(奈良教育大学 理科教育講座)
 丸山 海音 氏(奈良教育大学 理科教育講座)
 武藤 将道 氏(福島大学 共生システム理工学類)

画像提供(Twitter より)
 ヘビトンボ:@mitunari410
 タマムシ:【匿名希望】
 ツチハンミョウ:@Rail_KNZS
 マイマイカブリ:@NWTRchicken
 キマダラカメムシ:俳優 長谷川瑞己 (@mizukipunch)
 ウンモンスズメ:@punmarupunpun
 アカスジキンカメムシ:@yuzupomprin
 ウバタマムシ:@akoyryoka
 セスジスズメ:@komadesign1
 ゴマダラカミキリ:@sirahane1103
 ヨコヅナサシガメ:かたる
 コフキコガネ:茨城の田舎娘みーさ☆
 ノコギリクワガタ:@dfl180528

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参考資料

保坂哲朗, 栗本実咲 & 沼田真也. 日本の昆虫文化と昆虫ツーリズム. 観光科学研究 = Int. J. Tour. Sci. 57–64 (2017).
Twitterアカウント @OKAYU284. https://twitter.com/OKAYU284.
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日本のチョウ. (誠文堂新光社, 2012).

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浜松科学館自然観察園は地域の方々のお散歩ルート。歩道は端から端まで105歩。普通に歩けば1分足らずで通過してしまいます。 その1歩1歩にもたくさんの生き物がいて、関わり合い、科学的な事象が起こっています。「小さな森での小さな出会い」を少しずつお届けします。