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【自由に研究ラボ2022】子供たちが気になる材料を持ち込んで実験機器を使って探究しました。

はじめに

今年の6月~8月に開催した「みらいーら 自由に研究ラボ」が無事に終了しました。

子供たちが気になる材料を持ち込んで、電子顕微鏡、生物顕微鏡、実体顕微鏡、解剖セット等の実験機器を使って自由に探究しました。

イカを解剖したり、納豆菌を見たり、クモの糸の強さを測ったり、プラントオパールを同定したり…。科学館職員も初めての経験が多く、勉強になることばかりで、とても刺激的な日々でした。

・いつも見てるあの表面は、拡大するとどんな感じ?
・どうしてこんな動きができるのかな?
・あれとこれを比べてみたい
・自由研究で、電子顕微鏡を使いたい!

そんな子供たちのモチベーションを大切に、じっくりと観察をすすめていきました。

ここからは、子供たちが観察したこと、気づいたこと、そしてそれらに対する科学館職員のコメントをご紹介します。

子供たちによる18の観察記録をご覧ください。

葉の裏にあった不思議な穴

飯尾 晄太
材料:イヌマキ、キンモクセイ、ムクノキ、ツツジ、コナラの葉と、エノコログサの穂

◆ 気づいたこと
葉の裏には穴があったが、葉の表にはなかった。ムクノキの葉の表面には、トゲがあった。害虫等から身を守る為にあるのではないかと予測した。葉の裏にある穴は葉の種類によって、並び方や大きさ、形が異なっていた。特にイヌマキの葉の穴は規則的に一列に並んでいた為に美しいと感じた。一方、キンモクセイの穴は不規則に並んでいた。エノコログサの種子の上には、窪みがあった。きっと発芽しやすいように窪んでいるのではないかと予測した。

◆ 科学館職員のコメント
エノコログサの種子はお米そっくりだね。よく観察したことがなかったから、とても意外でした。食べてみたらおいしいのかな?
葉の穴には気孔という名前が付いていて、呼吸をしたり水蒸気を出したりする役割があるよ。どうして気孔は表には無いんだろう?イヌマキみたいに規則的に並ぶと何か良いことがあるのかな?それとも別の理由があって、特に意味無く規則的になっているだけなのかな?他の植物の葉も観察すると法則性が見つかるかも。


人間みたい!!

鈴木 麻紘
材料:アジサイの花

◆ 気づいたこと
【表は美しい】 見ただけでは違いはないが表裏がある。表は細胞が濃くきめ細かで整っている。裏は薄く粗く大きさもランダム。
【口がある】 裏にはタラコ唇のような気孔があり、呼吸をしている。タラコ唇は全体にあるのではなくゾーンがあり、かたまってある。口のように開いているもの閉じているものがあり、歌ったり話したりしているように見える。

◆ 科学館職員のコメント
アジサイの花の表面にはモコモコ、パクパクした世界が広がっているんだね!ハスの葉やバラの花の表面にもモコモコした突起があって、ハスには水滴が流れ落ちるロータス効果、バラには水滴がくっつくペタル効果があることが知られています。アジサイの花の表裏に霧吹きで水をかけてみると、そんな効果が観察できるかもしれないね。想像したら、僕もやってみたくなってきました。花の裏表で比べてみて、どうしてそうなるか考えてみよう。


だいすきなメロンのみえないもよう

岡部 心咲
材料:じぶんでたべたメロンのかわとしゅし

◆ 気づいたこと
皮と種子の表面は、“はちのす”みたいできれいでした。皮の模様はがさがさで、メロンが大きくなるときに皮がわれると思いました。本で調べたら、模様が大きすぎてわれてしまうこともあるし、模様がないメロンもあるとわかりました。私もどんどん背が伸びているけれど、体にはかさぶたはできていないから、メロンが大きくなるのはもっと早いのかなと思いました。大好きなメロンがもっと大きくなったらいいのになと思いました。

◆ 科学館職員のコメント
僕もメロンが大好きだけど、こんな模様があるなんて知りませんでした。種子の模様は管のように見えるね。この管は何に使われているんだろう?はちのすみたいだと何か良いことがあるのかな?気になっちゃうね。
岡部さんにはかさぶたが無くて安心しました。メロンの果肉は柔らかくて、皮は硬くて食べられないね。でも岡部さんは、骨は硬くて、皮膚は柔らかいと思います。中と外のどちらが硬いかが、かさぶたの有る無しに関係しているのかも。中と外でどっちが硬いと、どんな良いことがあるのかな?考えてみてね。


ひまわりの種の中のひみつ

有薗 朋希
材料:ジャンボひまわりの種とおばけひまわりの種

◆ 気づいたこと
ジャンボひまわりの種は、さわるとツルツルしていたけど、電子顕微鏡で見たら、毛みたいなものがいっぱい生えていました。毛みたいなものがマジックテープみたいになっていて、花とくっついていたのではないかと考えました。2種類の種の両方とも、種の先とおしりのところがうろこもようになっていました。うろこが重なっているようなので、根や芽が出る時に、うろこが順番に開いて出やすくなるのではないかと考えました。

◆ 科学館職員のコメント
種子は乾燥や動物に食べられることから身を守らなければなりません。でも硬く身を守り過ぎて芽や根を外に出せなくなると困ってしまいますね。朋希さんが観察したのはそんなひまわりの「守るところ・弱めるところ」だと思います。とても素晴らしい着眼点ですね。種子表面の毛も気になります。花とくっつくためなのかな?水分や養分を行き来させるのに使っていたのかな?今度は野外で種子が完熟する前のひまわりを観察すると面白そうだね。


種を漂白剤につけた影響

有薗 彩奈
材料:朝顔の種(無処理)と朝顔の種を漂白剤の原液につけて育て、育った種を漂白剤の原液につけることを4回繰り返した種(漂白4回)

◆ 気づいたこと
朝顔の種を漂白剤の原液につけると花の色が変わることが分かりました。そこで、材料の種の表面を電子顕微鏡で観察しました。未処理の表面は毛のようなものが生えていていました。しかし、漂白4回の種の表面は、何も生えていませんでした。漂白剤の影響で、毛のようなものが取れてしまったのではないかと考えました。花の色との関連性は分からなかったけれど、漂白剤が種に影響を与えることが分かりました。

◆ 科学館職員のコメント
アサガオを4世代にわたって研究している有薗さんの熱意に感服です。17世紀のヨーロッパでは花の一部が白色になったチューリップがものすごく高い値段で取引されていました。これはウイルスが原因だったんだけれど、漂白剤でも花が白色になるんですね。世代を越えて特徴が引き継がれているとしたら、遺伝子に影響を与えているのかもしれないね。ぜひ研究を継続して、お気に入りのアサガオの花を咲かせてみてください。


葉っぱの穴の違い

大井 森
材料:イチョウ、ヤマモモ、朝顔、カボンバ

◆ 気づいたこと
葉っぱを拡大すると、たくさんの穴が見えました。ヤマモモは裏に気孔があり、排出した物がまた降り注ぐのを防ぐためかもしれない。朝顔には毛穴のような穴があります。毛を押し出したような膨らみもあり、新しい毛を作っているのではと思いました。カボンバには丸い輪があって、そこには珪藻がいる。珪藻が作った輪にも見えるけど、カボンバに必要な物なのかは分からない。葉っぱは、分からないことだらけで面白いことだらけです。

◆ 科学館職員のコメント
葉っぱの表面には、目には見えない穴がたくさんあいているね。葉っぱの種類によって見た目が全然違って、驚きました。気孔は、空気や水を出し入れする穴だね。植物は動けないから、穴の場所や数に工夫がありそうだね。朝顔の毛は何のためについているんだろう。毛があると何かいいことがあるのかな?ガボンバの葉っぱに珪藻がくっついていたのはなんでだろう。葉っぱのまわりの環境と葉っぱの穴には、なにか関係があるかもしれないね。


すごかったか(蚊)!!

鈴木 悠里
材料:蚊

◆ 気づいたこと
アップで見た時 最初はどこが顔なのか目なのか分からなかったです。説明を聞いて、蚊の目は複眼でたくさんあることを知りました。イクラのようでした。羽も透明でふさふさの毛がありました。ドレスのようできれいでした。音を立てずに飛べるように毛がついているのかなと思いました。手足の先には爪のような部分があり、あんなに小さいのにしっかりついているのは衝撃でした。小さくても精密ですごいと思いました。

◆ 科学館職員のコメント
蚊は憎まれがちな生き物だけれど、悠里さんのコメントはとても優しくて、読んでいてとても嬉しく感じました。複眼の個眼の個数を数えてみたら、片方だけで431個以上ありました!土の中に棲んでいるアリジゴクの個眼を数えたことがあるんだけど、片方に6個だけ。蚊の方が視力に頼った生活をしているのかもしれないね。翅もとても素敵ですね。フクロウも羽根の縁に蚊に似た構造があります。どう機能しているのか気になりますね。


アブラゼミの抜け殻を見たよ

飯尾 明香里
材料:アブラゼミの抜け殻(地域別)

◆ 気づいたこと
アブラゼミの足は毛がたくさん生えていて、爪は2つに分かれていることに気がつきました。
ほかにも、口は2つにわかれていることに気がつきました。また、口には、木の汁を吸う管がありました。管は幼虫の時には2つに別れていることを初めて知りました。電子顕微鏡によって様々な不思議を発見することができたので、面白かったです。

◆ 科学館職員のコメント
セミの抜け殻を拡大するとこんなに面白い形をしているんだね! 幼虫はずっと土の中にいて立派な爪は活躍しなさそうだけど、羽化のために木に登る時に必要なのかもしれないね。口吻は確かに左右の部品が一つになっているみたい。けど、もしかしたら1枚の板がグルンとロールケーキみたいに巻いているのかも?次は裏返しにした口吻も観察して、確かめてみたいなぁ。
管の先端は尖っていて、これで植物を傷つけて汁を吸うのかもしれないね。


スルメイカの不思議

間瀬 慈朗
材料:スルメイカ

◆ 気づいたこと
吸盤を自分の手にぎゅっと押すとフックが手にくっついた。実体顕微鏡でみるとフックとフックの間に平らな山みたいなものがあった。平らな山とフックで獲物にぎゅっとひっかかる事ができると思った。イカ墨袋を潰すと黒色のイカ墨が出てきた。イカ墨を水で薄め生物顕微鏡でみると、黄緑色の周りを黒色で囲まれたつぶつぶが沢山あった。橙色のつぶつぶも少しあった。イカ墨の黒色の中に黄緑色や橙色が入っている事に気づいた。

◆ 科学館職員のコメント
間瀬さんのおかげで、僕も新発見があってとても刺激的でした。フックとフックの間の山型、気になるね!山型を作らずにフックの数を増やすともっと食い込みそう…。僕は、捕まえた餌を外れやすく、食べやすいような形にしているのかな?と推測しました。墨を顕微鏡で見た時に、黒色の水性ペンを思い出しました。ペンの黒色を水に溶かすと青色や橙色に分離することがあります。イカも人間も純粋な黒色を作るのは大変なのかもしれないね。


飛ぶ鳥、飛ばない鳥の羽 何が違う?

岡部 桃子
材料:鳥を観察したときに拾ったマガモとエミューの羽

◆ 気づいたこと
マガモの羽の硬いところは色が薄く透けていて、軸から細く分かれたところはとなりに引っかかって、ばらばらになりにくくなっていました。エミューの羽の硬いところはしっかり色がついていて、太くてぴんぴんで数は少なくスカスカしています。マガモの羽の硬いところを広げて手を離すと元に戻る理由がわかりました。このように飛ぶためには硬いところの形が大事だとわかりました。羽のほかの部分も調べてみたいと思いました。

◆ 科学館職員のコメント
マガモの羽根には毛並みがそろう秘密があったんだね。これで上手く空気をつかまえて飛ぶことができるんだ。飛べない鳥エミューの羽根は隙間だらけで、まるでほうきみたいだね。当日は気が付かなかったけど、図1のエミューの羽根は下から三分の一くらいのところで大きく枝分かれして、まるで2枚の羽根のようになっているよ!羽根をボリュームアップさせるのは何か理由があるのかな?動物園で生きたエミューを観察して考えてみよう。


おもっていたのとちがっておもしろかった

畠山 和貴
材料:たまごの殻と薄皮

◆ 気づいたこと
ぼくはたまごをたべるのがほんとうにすきなので、でんしけんびきょうてくわしくしりたいとおもいました。
からとうすかわは目でみるとおなじなのに、でんしけんびきょうでみたらぜんぜんちがっていました。からのそとがわはザラザラしたかんじなのに、うちがわはほねがたくさんまざっているみたいでした。だんめんのがぞうをみているときは、月にじょうりくするみたいでした。

◆ 科学館職員のコメント
ぼくもたまごがだいすきで、けさもたまごかけごはんをたべてきました。かたいたまごのからをわったときに、畠山くんのでんしけんびきょうしゃしんのことをおもい出しました。たまごのだんめんはほんとうに月のひょうめんみたいだね。ニワトリは、どうやってこんな石のようなものをつくっているんだろう?たまごよりかたそうなホネも、かくだいすると図3とおなじようなこうぞうになっているのかな?いろいろ気になってきちゃったよ。


きれいなアンモナイト

永井 優大
材料:アンモナイト

◆ 気づいたこと
いろんな種類があり、恐竜時代、海に栄えました。僕のはクレオニセラス・クレオンで、だいたい名前は長いです。ユウパキディスカスは直径20cm以上、厚み10cm以上で、縫合線があり、僕のも縫合線があってよかったと思いました。イカやタコと同じ頭足類で、今は殻しか残っていません。中に水晶があり、真ん中に赤ちゃんのようなアンモナイトがいました。水晶があったのでうれしいです。特にとてもきれいでした。

◆ 科学館職員のコメント
今は生きていないけれど、姿かたちを観察できるのは化石の魅力のひとつですね。
化石の一部が結晶化して水晶のようになっているのを見た時に、とても驚きました。昆虫の標本は、遺骸が風化しないように保存するものだけれど、化石は地層の中で化学変化など周囲の影響を受けるんだね。化石標本は、地球が作った標本なんだなって実感しました。いつか自分で化石を発掘できたらいいね。


相良油田の土壌に住む微生物

落合 晃馬
材料:相良油田の懸濁液をまいたシャーレ

◆ 気づいたこと
相良油田の土壌懸濁液をシャーレにまき、インキュベート後、プレート上に現れたコロニーを取り、走査型電子顕微鏡で観察した結果、1μm以下ほどの丸いつぶが見えた。ぼくは、このつぶが微生物だと思った。また、相良油田の土壌にいる微生物は、公園や畑の土より種類が少ないことが分かった。さらに、油田の土壌からは公園や畑の土にいる微生物とはちがう色や形のコロニーが現れ、土壌ごとにそれぞれ違う微生物がいることも分かった。

◆ 科学館職員のコメント
プレートを使って微生物を増やすと、コロニーができて目に見えるようになるね。微生物の種類によって、コロニーの色や形が違うんだね。なぜ油田にいる微生物は種類が少なかったんだろう。油田と公園の土は成分が違いそうだね。プレートの成分や、培養の条件を変えると、違った結果になるかもしれないね。微生物の研究は、目に見えない分難しいけれど、まだ誰も知らない新たな発見があることを期待しています。


納豆菌 大発見!!

西山 歩杜
材料:大豆(160グラム)、ワラ、市販品の納豆(1パック)

◆ 気づいたこと
蒸した大豆を2つの方法で発酵させ納豆菌を作ってみた。1つ目はワラに詰め、2つ目は市販品の納豆と混ぜた。ワラ納豆は粘り気が強く納豆菌ができていると思った。一方、市販品の納豆を混ぜたものは、粘り気が少なく菌ができているとは思えなかった。両者を顕微鏡で観察すると、菌の大きさは1.2μm位で楕円形で納豆菌を多数観察できた。粘り気の強かったワラの方が菌の数が多く、粘り気と菌の数は関係していると感じた。

◆ 科学館職員のコメント
西山さんはワラで作ってしまうくらい納豆の事が好きなんですね。僕も大好きです。これまで科学館の電子顕微鏡で細菌を観察したことがなかったことも相まって、納豆菌を観れたときは感動しちゃいました。顕微鏡の観察では数の違いしか分からなかったけれど、匂いや味の違いも気になりますね。食べてみたらまた感想を教えてください。もしかしたら、とても美味しい納豆菌の株が見つかるかも!?


カラスのペリット

山下 瑞喜
材料:カラスのペリット

◆ 気づいたこと
カラスのペリット(歯がない鳥が消化できない骨や毛、種などを吐き出した物)を観察した。ペリットからカエルの骨、カニ、ウミニナやアオドウガネ、クマゼミ、クワガタ、ハナムグリ、タマムシやトマト、桜、バラ科の実、ウリ、すいか、イネ科の種やイネの肥料、プラスチック、ホッチキスの針が出てきた。カラスがいろいろ食べていることが分かった。プラスチックやホッチキスの針といった食べることが出来ない物も出てきて驚いた。

◆ 科学館職員のコメント
一昔前は生ゴミを漁ってしまうことが問題になっていたので、もっと加工食品が含まれているのかと思っていました。でも瑞喜さんの家の周りのカラスは、川や畑など野外環境で手に入るものを食べているのですね。人間でも1-2歳の子供は口に入る物は何でも食べてしまいます。カラスにもそんな好奇心があるのかな?と思いました。研究を続けて、カラスと人間がもっと仲良く暮らすことができる方法が見つかることを期待しています。


プラントオパールによるヌートリアの食性調査

山下 颯梧
材料:カラマツ、マダケ、アワ、オオクマザサのプラントオパール

◆ 気づいたこと
通学路で死んでいたヌートリアが何を食べていたか調べるため、植物を採取しプラントオパールを抽出した。プラントオパールとは、植物を鋳型として作られる植物ケイ酸体のことである。種類によって形状が違うので、植物のプラントオパールとヌートリアの胃から出てきたプラントオパールを比較することで何を食べていたかが分かる。この調査の結果アワ、オオクマザサ、カラマツ、マダケなど全6種類を食べていたことが分かった。

◆ 科学館職員のコメント
プラントオパールのことを知らなかったのでとても勉強になりました。植物によってはガラスのような物質を作るのですね。縄文時代から稲作が始まったことの根拠にもなったとか。
ヌートリアは特定外来生物に指定されていて、具体的に身の回りの生態系へどんな影響を与えているのか調べる颯梧さんの研究はとても意義のあることです。これからも彼らの影響を軽減する道を探っていってみてください。


くもの糸のひみつを見てみよう

中野 太陽
材料:くもの糸

◆ 気づいたこと
くもの糸を生物顕微鏡で見ると、何本もの糸が束になって、一本の糸になっていた。また、糸は白に見えていたけれど、実は透明だったことが分かった。
強さの実験で分かったことは、数日前に採ったくもの糸は、3gのおもりを乗せたら切れた。一方、採ったばかりの糸は、5gでも切れなかった。伸びる力の実験でも、採ったばかりの糸の方がよく伸びた。古い糸はもろくなり、新鮮な糸ほど強いのかもしれない。

◆ 科学館職員のコメント
クモの糸におもりがぶら下がっているところを見て、1本の糸でこんなに耐えられるのかとびっくりしました。最大何グラムまで耐えられるのか、知りたくなりました。時間が経つと糸がもろくなるということは、クモは古くなった巣を作り替えるのかな。クモの出す糸には種類があって、巣を支える糸と、エサを捕まえる糸があるよ。いろいろな種類のクモや、役割の違う糸を顕微鏡で観察すると、違った構造が見えるかもしれないね。


感染対策と不織布マスク

西藤 槙音
材料:不織布マスク(未使用)、不織布マスク(1日使用済)、不織布マスク(3回洗濯済)

◆ 気づいたこと
不織布マスクを電子顕微鏡で見たら、繊維が不規則に入り組んで見えた。新型コロナウィルスの大きさは、この電子顕微鏡写真の倍率よりもっと大きな倍率でないと良く見ることができないが、この入り組んだ繊維にウィルスが付着して口の中に入るのを防いでくれると思った。
①②③の目視は変わらないが、電子顕微鏡では②はゴミが付いて、③は繊維がばらばらになっていた。やっぱり不織布マスクは使い捨てでないといけないと気付いた。

◆ 科学館職員のコメント
新型コロナウイルスの影響で社会がうまく機能しづらくなった世の中で、槙音さんのようにマスクの機能性を調べることは、とても意義のあることだと思います。裏面の様子も気になりました。もしかしたら、擦れる頻度が高い裏面は表面よりも劣化がはげしいかもしれないですね。資源を大切にする意味でも、より丈夫で長持ちして、感染予防効果の高いマスクが生まれるといいですね。


おわりに

皆さん素晴らしい着眼点と考察でしたね。

全ての参加者に共通するのは、観察が身近なちょっとした疑問をスタートにしていることです。人によっては夏の自由研究の一部として発展的な内容でしたが、スタート地点は皆さん一緒な気がします。

・好きな食べ物は拡大するとどうなっているの?
・クモの糸ってどのくらい強いんだろう?
・カラスって何食べているんだろう?
・とにかく色んな葉っぱを見てみたい!

そんな小さな疑問は、観察・実験することで一部が解消されますが、さらに大きな疑問が生まれることもしばしばです。これも全ての参加者に共通する体験ではないでしょうか。

毎年たくさんの方から「夏の自由研究は何をしたらいいんでしょう?」という質問をいただきます。そんな方は、まずは今回のイベント参加者の皆さんと同じように身近な小さな疑問から挑戦してみてください。そして、小さな発見、大きな発見、新たな疑問をたくさん生み出してください。その中からきっと「夏休みの自由研究」の種子が見つかると思います。

ご紹介した18の観察記録のうち、特に優れた観察5件が選ばれ、「探求賞」が贈られます。(審査員:針山孝彦先生(浜松医科大学特命研究教授))
10月15日(土)に表彰式および、受賞者による観察発表会が催される予定です。以下に探求賞受賞者をご紹介します。

有薗 彩奈
種を漂白剤につけた影響
材料:朝顔の種(無処理)と朝顔の種を漂白剤の原液につけて育て、育った種を漂白剤の原液につけることを4回繰り返した種(漂白4回)

落合 晃馬
相良油田の土壌に住む微生物
材料:相良油田の懸濁液をまいたシャーレ

西山 歩杜
納豆菌 大発見!!
材料:大豆(160グラム)、ワラ、市販品の納豆(1パック)

山下 颯梧
プラントオパールによるヌートリアの食性調査
材料:カラマツ、マダケ、アワ、オオクマザサのプラントオパール

中野 太陽
くもの糸のひみつを見てみよう
材料:くもの糸

来年も「みらいーら 自由に研究ラボ」を開催する予定です。
次回も多くの方々のご参加をお待ちしております。

協力:針山孝彦 氏(浜松医科大学)


※10月29日追記
10月15日に「みらいーら自由に研究ラボ 探求賞 表彰式」を無事に開催することができました。表彰式でいただいた針山先生の講評を下記のnote記事で紹介しています。是非ご覧ください。


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浜松科学館 みらいーら
自然観察園の整備活動や、生き物観察に必要な物の購入に充てさせていただきます。ご支援のほど、よろしくお願いいたします。