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「不思議に満ちた世界」針山孝彦先生(浜松医科大学特命研究教授)

10月15日に「みらいーら自由に研究ラボ 探求賞 表彰式」を開催しました。「みらいーら自由に研究ラボ」は、子供たちが気になる材料を持ち込み、科学館の実験機器を使って実験・観察するイベントです。


今回は針山孝彦先生(浜松医科大学特命研究教授)からいただいた講評を紹介します。

針山先生のメッセージには、イベント参加者だけでなく、すべての子供たち、そして私たち大人の心にも響く「研究」の意味、大切さ、面白さがつまっています。


不思議に満ちた世界


世の中は不思議で満ちています。ミカンを剝くと小さく可愛い小部屋が並んでいて、一房食べると甘酸っぱくさわやかになります。お茶を入れると緑色が広がり、口に含むと疲れが癒やされます。なんでそんな形になるの、どうして美味しかったりさわやかになったりするの・・・・。次から次へと沸いてくるそれらの不思議を、どうしてだろうと調べるのが研究なのです。そして常に興味を持ち続けていないと研究ができないので、研究は生活の一部になります。

2022年の理科の自由研究「みらいーら自由に研究ラボ」の発表に参加しました。一言で表現すると「すごい!」です。すべての研究が、自分達の身の回りの出来事をテーマとしていました。背伸びをしていることなく、自分たちの興味に基づいて自由にテーマを選んでいるので、研究への強い動機と発表の力強さを感じました。次に気づいたのは、「自由で豊かな発想の持ち主が研究をしているな」ということです。研究は、勉強して成績が良くなったら、その延長上で出来るものではありません。物事にとらわれない豊かな発想力が不可欠なのです。自由で楽しくテーマを掘り下げていく力と、学校や色々な場所で勉強した知識が合わさることで研究が成長していきます。そのため研究は、いつでもどこでもスタートすることができ、深めていくこともできます。

「みらいーら自由に研究ラボ」に参加した全員に、今回探求賞に選ばれた皆さんと同じように、研究者になるための素質が十分に備わっていると思いました。研究をして賞をもらうことはとても嬉しいことです。受賞者の皆さんおめでとうございます。でも、それ以上に生活の中で研究をしていることが楽しいと、参加してくれた皆さんが感じてくれているだろうと信じています。賞を貰った人も、貰えなかった人も、これからも研究を、是非楽しみ続けてください。「あっ、そういうことだったのか!」と多くの不思議を自分で解決できる幸せな瞬間が、皆さんにたくさんやってきますように。

動物園も水族館も動物福祉に基づく見せ方を工夫するようになり、来場者に生態を理解して貰う努力を払うようになりました。単なる自然の見世物小屋ではなくなりつつあるのです。人間が自然や生態系を本当に理解しなくてはならない時代の到来を反映しています。世界中の科学館も、自然や生態系の仕組みを、より科学的に理解する場所へと変貌しつつあります。科学に目覚めた子供たちが自分自身で考えることができるように手助けすることが不可欠なのですが、一人一人に寄り添って考える力を養うために膨大なエネルギーが必要になります。今回の企画を進め、研究者のたまご達に寄り添われた職員の方々は大変なご苦労だっただろうと感謝の念に堪えません。それを支えたご家族の方々の熱意や、浜松市の心意気にも感謝します。浜松科学館みらいーら発の、世の中の不思議を科学的に子供たち自ら解明する力の育成法が日本全体に広がっていくことを願っています。

世の中の不思議をしっかり見つめることが日本の科学力を伸ばし、多様な物の見方を育成し互いの考え方を尊重できるようにすることで世界平和に繋がることを祈ります。より多くの皆さんが身近な不思議の数々に気づき、楽しい世界になりますように。

針山孝彦


以上です。

「みらいーら自由に研究ラボ」は来年度も開催予定です。
不思議を胸に秘めた皆さまのご参加を、職員一同、楽しみにお待ちしております。

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