科学館職員と電子顕微鏡を1時間貸し切りにして、子供たちが興味あるものを拡大観察しました。
浜松科学館では、今年4月に科学館職員とデジタルカメラ、電子顕微鏡を1組1時間貸し切りにして、子供たちが持ち込んだものを観察できるイベント「1倍から30,000倍まで!超拡大ラボ」を開催しました。
小中学生を対象に募集し、イベント当日に自分が拡大したい対象(試料)を持ってきてもらいました。持ち込まれた試料は、昆虫や植物から、お札や宝石、抜けた乳歯まで、正に千差万別。筆者も驚きの連続、とても刺激的な毎日でした。
子供たちの
・いつも見ているものの表面は拡大するとどんな感じ?
・どうしてこんな動きが出来るのかな?
・あれとこれを比べてみたいな
そんなモチベーションを大切に、1組1組じっくりと観察をすすめていきました。
ここでは掲載許可をいただいた25組を対象に、デジタルカメラ・電子顕微鏡で撮影した写真と、子供たちが観察をとおして感じたこと、分かったこと、考えたことをご紹介します。様々な倍率で観察することで、身近な日用品や生き物にもこれまで気づかなかった発見があるかもしれません。
電子顕微鏡を用いた研究の権威である浜松医科大学の針山先生の講評とともにお楽しみください。
宇宙リップ
くらた ゆうこ
材料:『チューリップ』
◆ 気づいたこと
チューリップの花びらの表と裏では、全然似ていなくてびっくりしました。表は、なみなみの線でした。裏は、宇宙に星があるみたいでした。花粉は丸いと思っていましたが、ふにゃふにゃでした。大きくして見たら、いつも見ている物とは全然違うなと思いました。
公園のみんなの観察
大井 森
材料:『苔、落ち葉』
◆ 気づいたこと
僕は公園の苔を観察しました。まず自分の目で見たら『小さいなぁ』と思いました。次に、家の顕微鏡で見たら枝分かれしていて『木みたいだ』と思いました。そして、電子顕微鏡で見たら茎と葉の区別がなくて、びっくりしました。葉の表も裏もボコボコしていて、木とは違いました。調べたらケヘチマゴケかその仲間という事が分かりました。他にも、落ち葉の中の小さな虫を観察して、顔や足を見ることができて楽しくて面白かったです。
ヒマラヤスギの種子のはね、拡大したら凄かった
土岐佳鈴
材料:『ヒマラヤスギの種子のはね部分』
◆ 気づいたこと
まず、表面の様子が表裏違うことがわかりました。図3の面では筋が複雑でマジックテープのように種を本体にくっつける働きをしているのではないかと考えました。逆に図4の面は筋を真っ直ぐにすることで隙間にうまく入り込めるようになっていると考えました。次に、断面の様子から筋の中は空洞になっていることがわかりました。これは、重量を軽くして、少しでも長く風にのるためだと考えました。
不思議な葉っぱ
陸 彩嘉
材料:『 3種類の葉っぱ(①番はつるつるの葉っぱ、②番はモフモフの葉っぱ、③番はシダ類の葉っぱ) 』
◆ 気づいたこと
①の裏に穴がいっぱいありました。②の裏に細い毛がいっぱいありました。小さい穴もありました。③はきれいなギザギザパズルの模様になっています。裏にコーヒー豆のような構造も見えた。葉っぱ裏の穴やコーヒー豆みたいなものは気孔です。①の気孔が目みたいで、面白かった。それぞれ気孔の大きさ、数、開き具合が全然違う、それは一人一人の個性だと思います。
葉っぱって、本当に不思議だね!
たんぽぽの種にはツメがある!
岡部 心咲
材料:『たんぽぽの綿毛』
◆ 気づいたこと
たんぽぽの綿毛をデジタルカメラで撮った写真を見て、種がギザギザしていていることに初めて気づいてバナナみたいと思いました。電子顕微鏡で見るともっとギザギザでドラゴンフルーツみたいです。もっともっと拡大したら恐竜のツメみたいに見えました。それあとに種に触ってみたら、指先でギザギザを感じました。それはきっと種が地面に落ちたときにとばされないようにしがみつくためだと思いました。理由がわかって楽しかったです。
通学路に咲く八重桜
伊藤 光磨
材料:『八重桜の花』
◆ 気づいたこと
毎年通学路に春になると咲く八重桜の花びらが、どうなっているのか拡大して見てみたかったので、観察してみました。分かったことは、花びらの表と裏が違う表面をしていると言うことでした。とてもビックリしたし、凄いと思いました。
アダンソンハエトリの脚の秘密
山本 寧々
材料:『アダンソンハエトリ』
◆ 気づいたこと
歩脚の裏側の毛はヘラのようになっていた。拡大すると、さらに細かな毛があり、毛先が少し膨らんでいた。そこにはヤモリと同じように分子があり、壁面などに張り付くことができるのは、その分子と、ものの分子が引き合う「ファンデルワールス力」によるものだと考えた。また、ヘラ状になっているのは力が入りやすいからなのではとも考えた。以上のことから、ハエトリグモが主に捕食するハエの脚も、同じ構造なのではないかと思う。
アブラムシの観察
関 鷹星
材料:『ソラマメヒゲナガアブラムシ』
◆ 気づいたこと
アブラムシについて電子顕微鏡で観察して特に気になったのは、おしりの3本のトゲです。調べたら、左右の2本は角状管で警告フェロモンの吹き出し口でした。仲間に危険が起こった事を知らせるためです。そして、真ん中のトゲの先の部分は尾片です。働きは蟻に蜜をあげることです。僕はアブラムシにはあまり興味はなかったですが、観察してみるとすごく面白かったのでこれからもこの経験を忘れず色々観察してみたいです。
ありのふしぎ
河合 舞王
材料:『あり』
◆ 気づいたこと
ありの目をかく大してびっくりした。トンボやハチのように、複眼を持っていた。ありも昆虫だった。ありは、口でこきゅうをしていないそうだ。いったいどこで?おしりにある気門という穴でしている。どうしてだろう。ありは土の中でくらしているので、口に土が入ってはこまるからだろうか。他の昆虫たちはどうなのだろうか。人間の体の作りとはちがって、ふしぎだ。
発見!蟻の成虫と幼虫の違いと同じところ
疋田 琳太朗
材料:『蟻の成虫と幼虫』
◆ 気づいたこと
幼虫の触覚は短く、成虫は長く曲がっている。どうやって曲がっていくの? 成虫の方が沢山毛がある。人と同じで、毛で体を守っているの? 息を口でしているのではなく、体、尻、節の部分にある穴で息をしている。それは、幼虫にもあって、幼虫もちゃんと息をしている証拠。息を沢山しないと苦しくなるから、穴が沢山あるの? 不思議な液をつけたから爆発しないで観察ができると聞いたので、液のパワーはすごく強い。
こんなところにハニカム構造
戸田 なつみ
材料:『マダガスカルゴキブリ(メス)』
◆ 気づいたこと
マダガスカルゴキブリは、大きく厚めだったので、真空状態にするのに最初は苦労しました。観察前に私が見たかったところは、触覚・足・尾突起でした。でも、始めに見た胸のあたりの表面を拡大してみたら、ハニカム構造になっていて驚きました。ハニカム構造は、少ない材料で強度を高められると聞いたので、昆虫の体は無駄のない構造になっているのかもしれません。ほかにも、足の爪には、波のようなしわがありました。
タマムシの足がつるつるしたカベにくっつく理由
中村 陽冶
材料:『昆虫の足』
◆ 気づいたこと
タマムシはつるつるしたケースのカベを自在に登っていたけれど、ヒラタクワガタとシロテンハナムグリはカベを登れませんでした。電子けんび鏡でみると、タマムシの足だけに細かいエリンギのような形のものがびっしりと生えていました。先のほうがタコのきゅうばんににているので、これがくっついて落ちないようになっているのかもしれないと思いました。
いろんな符節を調べよう!
戸塚 紗音
材料:『符節(コクワガタ、アリ、ナナホシテントウ、カベアナタカラダニ)』
◆ 気づいたこと
ガラスを登れる虫と登れない虫の違いが気になり符節を比べました。登れないコクワガタはほとんど毛が生えていませんでした。登れる虫はどれも毛が生えていたけど、毛の長さや量や形がそれぞれ違ったので、登る仕組みが違うのかと思って調べたところ、アリは爪でひっかけて登り、ナナホシテントウは毛先が平な吸着毛で吸盤のようにくっつけて登り、カベアナタカラダニはヤモリと同じファンデルワールス力で登ることがわかりました。
ネコとぼくの毛
牧田 祐児
材料:『家のネコの毛、ぼくのかみの毛』
◆ 気づいたこと
去年の春にひろった家のかいネコと、ぼくのかみの毛をくらべました。自分の目だけで見た感じは、りょうほうとも一本の毛です。しかし、かくだいしたら ぜんぜんちがう物に見えました。おどろいた事に、ぼくの毛はツルツルして見えるけれど、ネコの毛はボコボコしてアスパラみたいでした。けんびきょうでかくだいすると、見え方が変わって、おもしろかったです。また色々な物をかくだいして、かんさつしてみたいです。
父と私とバロン(犬)の毛
松井 月那
材料:『各自の毛』
◆ 気づいたこと
自分と父と犬の毛を観察。犬の毛は抜け落ちていたものを観察したため毛根がなく、非常に綺麗でキューティクルもあった。自分の髪の毛は自分で抜いたものを観察したため毛根があり、犬の毛と同じくらいキューティクルがあった。しかし、父の髪の毛は普段からリンスなど髪の毛のケアをしっかりしていないせいかキューティクルが剥がれていた。肉眼では違いがわかりにくいが顕微鏡で見ることにより違いがわかりとてもおもしろかった。
卵の殻の外と中
富田 榛真
材料:『卵(ニワトリ) 』
◆ 気づいたこと
卵はツルツルしているけれど、触るとザラザラしているので、拡大したらどうなっているのだろうと思いました。表面はデコボコしていて拡大したら穴が開いていたけれど、内の膜を拡大してみたら繊維のようなものが見えて驚きました。殻の断面は、前に読んだ本に載っていた、洞窟にある石灰華段のようで繊維が階段のようになっていたので、調べてみたら同じ成分の炭酸カルシウムでできていたので、驚きました。
歯には穴があいていた!
岡部 桃子
材料:『はじめて抜けた私の下前歯』
◆ 気づいたこと
歯の表面はぎゅっと詰まっているのに、内側はスカスカでやわらかそうでした。内側をうーんと拡大してもらったら、小さな穴がたくさんあいていてびっくりしました。小さな穴をよく見ると一つの方向に向かっているように見えました。何かの通り道だったのかなと思いました。インターネットで調べたら、硬いエナメル質とやわらかい象牙質があると書いてあって、見た通りだとわかりました。目で見えないものが見えるのはすごいと思いました。
お札の瞳、今昔くらべ
相澤 誉
材料:『岩倉具視の五百円札(昭和44年頃のもの)と野口英世の千円札(令和2年頃のもの)』
◆ 気づいたこと
約50年前のお札と今のお札の瞳を比べてみました。昔のお札の岩倉具視さんの瞳は凹凸がなく、紙の繊維しか写っていません。今のお札の野口英世さんの瞳は、紙の繊維と、円状に瞳を描く細かい凸が見えます。お札に描かれている絵は、型を使って印刷されていますが、この型は人の手で彫られています。こんなに細かい線が彫られているなんて驚きました。この50年で、彫る人の技術力と、印刷能力が上がったのだと感じました。
諭吉とムハンマドを超拡大してみた
社本 礼央
材料:『一万千札と新聞紙』
◆ 気づいたこと
と言っても、これはお札と新聞紙のことである。諭吉は均一で 細やかでなめらかであり、印刷部分もはっきりとわかる。それに比べてムハンマド は荒くボソボソとしていた。紙のことを調べると、 お札と新聞紙では原料も作り方も違っていることを初めて知ることができた。それが超拡大した時の違いに関係していると思った。物事の本質を知るためには、近づいて見ることと大きな視野で引いて見ることで理解が深まることがわかった。
マスクを大きくして見ると、どうなっているのか
町田 馨
材料:『不織布マスク 使ったもの、不織布マスク 新品、布マスク 新品』
◆ 気づいたこと
使ったマスクの外がわには、目には見えないけど何かがついていました。なので、マスクが目に見えない何かをはなや口の中に入ることをふせいでくれていることが分かりました。ぼくは、よくマスクをずらしてしまっていましたが、目に見えない何かが体に入ってくることをふせぐためには、はなや口を出さずにしっかりとマスクをすることは大切だと思いました。
黒鉛の姿
林 遼太
材料:『鉛筆の芯(黒鉛)』
◆ 気づいたこと
鉛筆の芯の意外な姿を観察することが出来て、とても良い経験になりました。普段鉛筆を使用している時には、先端も木に隠れている部分もどちらもツルピカしていますが、数十倍に拡大したことによって、先端部分はとても荒々しいゴツゴツした様子が、もう一方は綺麗に重なり合った様子を見ることができましました。このように、通常は違いがなくても、拡大することによって意外で、面白い違いがある事に気がつく事が出来ました。
キラキラしているもの
齋藤 優
材料:『ダイヤモンド、プラチナ、18金』
◆ 気づいたこと
3種類の材料を3000倍に拡大して観察をしました。1mmを3000倍すると3mになるから拡大できる電子顕微鏡はすごいなと思いました。どの材料を3000倍に拡大しても、どこにもでこぼこが無くてつるつるに見えました。だから、ダイヤモンドもプラチナも金もすごくキラキラして見えるのかなと思いました。ダイヤモンドの拡大写真は山がある惑星みいだなと思いました。
身近な物をよく見たら
南 裕大
材料:『豆電球』
◆ 気づいたこと
僕は電気がどういう仕組みになっているのか調べるのが好きです。でもすごく近付いて見た事がなかったので見たくなりました。近づくと真ん中のネジネジしているフィラメントという部分の細かなつくりが見えました。細く長く続く溝が見えます。僕の予想は熱を逃す溝か、作る時に自然とできてしまうかの2つです。色んな人に聞いてみたけどはっきりは分かりませんでした。でも理由はあるし、全部の電球にあるのか知りたいです。
伸ばす前と伸ばした時の輪ゴム
宮城島 捷翔
材料:『輪ゴム』
◆ 気づいたこと
伸ばす前と伸ばした時の輪ゴムを顕微鏡で見ました。伸ばした時は、白く細長い線がたくさんありました。伸ばす前は、丸まっているように見えました。伸ばす前の輪ゴムは、小さな粒がたくさん手をつないで丸まっています。引っ張ると手をつないだまま細長く伸びます。
ぼくは、伸ばしていない太い輪ゴムを触わるのが気持ちよくて好きです。丸まっているところが多いからだと思います。今度は細い輪ゴムと、太い輪ゴムを比べたいです。
おどろきいっぱい!液晶画面
相澤 要
材料:『電卓の数字が出るところの液晶画面』
◆ 気づいたこと
電卓の液晶画面の断面を拡大しました。普通に自分の目で見るとうすい1枚の板だけど、拡大して見るとすごくうすい3枚の板が重なってできていることがわかりました。
指で触ってみるとつるつるの平らな板だけれど、拡大して見るとでこぼこしているところがたくさんあってびっくりしました。でこぼこが何だか波や虫みたいに見えて面白いです。
おわりに
以上、25作品をご紹介しました。
どの作品も素晴らしい着眼点と考察でしたね。
針山先生によって特に優れた観察を行った3名が選ばれ、6月19日に浜松ロータリークラブ、浜松東ロータリークラブより優秀賞として賞状および副賞が贈呈される予定です。下記に3名の優秀賞受賞者の方々をご紹介します。
疋田 琳太朗
発見!蟻の成虫と幼虫の違いと同じところ
材料:『蟻の成虫と幼虫』
戸塚 紗音
いろんな符節を調べよう!
材料:『符節(コクワガタ、アリ、ナナホシテントウ、カベアナタカラダニ)』
南 裕大
身近な物をよく見たら
材料:『豆電球』
是非また電子顕微鏡を用いたイベントを開催したいと考えております。
次回も多くの方々のご参加をお待ちしております。
共催:浜松ロータリークラブ、浜松東ロータリークラブ
協力:針山孝彦 氏(浜松医科大学)