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冬が旬!擬態昆虫を探してみよう。

12月が近くなって、そろそろ冬といった感じですね。
自然観察園は、活動する生き物が減って少し静になってきました。

私たち哺乳類は体温調節が可能ですので、体温を一定に保ち、体を動かすことができます。
しかし他の動物たち、特に昆虫は、体温調節が出来ず寒い冬は身動きがとれません。

動けないことのデメリットの一つとして、捕食者から逃げられないことが挙げられます。
捕食者に食べられないように、昆虫たちはどの様な対策をしているのでしょうか?


昆虫たちの秘策、それは「擬態」です。

下の写真をご覧ください。
この中に自然観察園に生息するある昆虫が写っています。
どこに隠れているか分かりますか?

コミミズク

答えは…
























こちら!

コミミズク枠線


隠れていたのは、コミミズクの幼虫でした。
コミミズクはカメムシ目ヨコバイ科に属する昆虫。
幼虫の状態で、コナラやアラカシ、イロハカエデなどに張り付いて越冬します。

枝にピタリと張り付いて、樹皮に見事に「擬態」していますね。
枝からはがすとこのような形。

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体が平らで、脚が体にぴったりと合う形になっているのが分かります。

「擬態」というワードは何度か過去のnote記事にも登場しました。
今回はしっかりと擬態について学んでいきたいと思います!

擬態とは、「ある生き物が何かに似せてそれを見つけるものをだますこと」


例えば、「蛾」が「枯葉」に似せて、捕食者である「鳥」をだますという一連の流れです。

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何をモデルにするかによって、擬態をいくつかの種類に分けることが出来ます。
ここでは代表的な4種類の擬態をご紹介しましょう!

① 隠蔽型擬態(いんぺいがたぎたい)


隠蔽型擬態は、「周囲の環境を真似る」擬態です。

枝を真似るナナフシや、枯葉を真似るコノハチョウなど、一番オーソドックスで想像しやすい擬態なのではないでしょうか。

上でご紹介したコミミズクを例にすると、3者関係は下の絵のようになります。
「コミミズク」が「枝」に似せて、捕食者である「鳥」をだまします。

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② ベイツ型擬態

ベイツ型擬態は、「危ない・不味いモデルを真似る」擬態です。

毒をもつ蝶を無毒な蝶が真似たり、毒針を持つハチをカミキリムシが真似たり、擬態する者は危険な生き物をモデルにしています。
「不味い・危ない」生き物をモデルにしますので、ハチの黄色と黒色の縞々など、真似る側も目立つ色形になることが多いです。
隠れることを目的とした隠蔽型擬態とは逆の発想ですね。

ベイツ型擬態は、過去のnote記事で毒蝶ジャコウアゲハを真似る無毒蝶クロアゲハを例にご紹介しました。


改めて絵で表すと下の様な関係性です。

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カラスアゲハの他にも、オナガアゲハや蛾の仲間のアゲハモドキなど、毒蝶ジャコウアゲハに擬態する無毒な生き物がたくさんいます。

③ ミューラー型擬態

ミューラー型擬態は「不味い・危ない生き物同士で真似し合う」擬態です。

毒針や口で刺すハチやアブの仲間は黄色と黒色の縞模様をしていることが多いです。
黄色と黒色の縞模様と言えば、危険なイメージがありますね。

毒針を持たないオスのスズメバチをお客様の手に乗せてもらうイベントを開催しましたが、毒針がないと分かっていても、「黄色と黒色の縞模様が怖い」という方が大勢いらっしゃいました。

海外の蝶に注目すると、複数種の毒蝶が、翅の模様を互いに似せる例が報告されています。

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「他人の空似」と言うには無理があるほど似通っていますね。
互いに毒を持ち、このように翅の柄を統一することで、天敵である鳥へ強いアピールになると考えられています。

④ 攻撃型擬態(ペッカム型擬態)

ここまで紹介した3つの擬態は「食べられないように」するのが目的でした。
一方の攻撃型は「食べるために周囲の環境を真似る」擬態です。

昆虫界屈指のハンターであるカマキリは、天敵である鳥へ見つからないように、また捕食対象であるバッタやトンボなどに気が付かれないように体色を緑色や茶色にしています。
ターゲットに近づくと体を揺らし、風になびく植物に似せた動きを演出します。

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カマキリの中でも、花に擬態するハナカマキリの仲間が有名かもしれません。

ハナカマキリの仲間は東南アジアに分布し、日本(もちろん自然観察園にも)にはいませんが、近年、その面白い生態が明らかになりましたので、この機会にご紹介します。

従来、ハナカマキリは花を模すことで花に集まる昆虫たちを視覚的にだまし、捕食するのだろうと考えられてきました。
しかし、日本の研究者たちが詳細に観察したところ、成虫は花に集まるハチや蝶などの昆虫を食べていたのですが、幼虫はトウヨウミツバチというハチの一種を主な獲物にしていました。

何やらハナカマキリの幼虫には、外見だけではない他の秘密がありそうです。

研究者たちは、ハナカマキリの幼虫がトウヨウミツバチを「匂い」でおびき寄せていると考えました。幼虫の体表の化学物質を調べてみると、ハンティングの最中にトウヨウミツバチと同じ匂い物質が出ていることを発見しました。

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ミツバチたちは、ハナカマキリの幼虫が擬態する「花」におびき寄せられ、次に「仲間のハチ」の匂いに反応し接近したところを捕獲されていたのです。

つまり、ハナカマキリの幼虫は「花」という視覚的な擬態だけでなく、「匂い」という化学的な擬態をして、獲物にばれないよう効率的にハンティングしていたのです。

3者関係で成り立つ「擬態」


物事のシンプルな事象を説明する際に、「生きるか・死ぬか、食うか・食われるかだ。」と自然を例に挙げられることがあります。

しかし実際は「生きるか、死ぬか」、「食うか、食われるか」の中にも擬態のように「擬態する者」「モデル」「だまされる者」という3者関係が存在し、視覚や嗅覚(化学物質)を使った複雑なかけ引きが繰り広げられているのです。

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是非この冬は自然観察園で擬態する昆虫を探してみてください!

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おまけ

1月23日に静岡県立森林公園と共催で擬態する昆虫たちを探すイベントを開催します!一緒に昆虫たちの巧みな擬態を体感してみましょう♪

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参考資料
藤原晴彦. だましのテクニックの進化 ―昆虫の擬態の不思議―. オーム社 (2015).
Mizuno, T., Yamaguchi, S., Yamamoto, I., Yamaoka, R. & Akino, T. ‘Double-trick’ visual and chemical mimicry by the juvenile orchid mantis hymenopus coronatus used in predation of the oriental honeybee apis cerana. Zoolog. Sci. 31, 795–801 (2014).

105歩で生き物観察ヘッダー

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浜松科学館自然観察園は地域の方々のお散歩ルート。歩道は端から端まで105歩。普通に歩けば1分足らずで通過してしまいます。 その1歩1歩にもたくさんの生き物がいて、関わり合い、科学的な事象が起こっています。「小さな森での小さな出会い」を少しずつお届けします。