花粉をつけないスギ?無花粉スギとは【浜松ミクロ散歩「スギ(杉)」前編】
「浜松のことをもっとよく知りたい!」
好奇心旺盛なスタッフが浜松科学館を飛び出して、浜松各地を訪問。
訪問先で出会った方々とふれあい、こだわりの商品などを科学館にある電子顕微鏡で観察して、ミクロから浜松を探っていく企画です。
今回、研究するのは「スギ(杉)」。
実は、スギの木は日本の固有種だとご存知でしたか。古くから神社仏閣の森林や建材などの木材としても幅広く利用されてきました。スギを使って作られたお家に入るといい香りがしてすごくリラックスしますよね。
浜松市民にとって、スギの木というと天竜スギを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。浜松市の山々にも多く植えられている身近な存在であるスギに焦点を当ててみましょう。
ご協力してくださったのは、浜松市浜名区に施設を構える「静岡県森林・林業研究センター」の袴田さんと光本さん。
森林・林業の研究開発や技術相談を行っている森林・林業の専門施設で、例えば、スギやヒノキなどの育成に関する研究や林業における技術開発、静岡産シイタケ栽培の技術開発、動物や虫などの食害・病害の防除、一般市民への教育普及などの幅広い活動を行なっています。
一般市民でも見学可能!学んで楽しいドングリホール
静岡県森林・林業研究センターの施設の中に、森林や木材のことを楽しく学べる「ドングリホール(森の科学館)」という入場料無料の資料館があるということで見学させていただきました。
小粥
素敵な建物ですね。
この中はスギの良い香りがしますね。
光本さん
建物は建設当時に結構こだわって作ったみたいです。
小粥
剥製もありますね。本物だ!
小粥
ヒノキとスギでこんなに触り心地が違うんですね。
光本さん
そうですね。違いますね。
スギの方が柔らかいんですよね。
小粥
ピアノのアクション(※)もありますね。
細かい部品とその素材まで記載されている。
(※鍵盤を押すとハンマーが弦を打って音を鳴らすピアノの仕組みのこと。)
小粥
これはすごい!世界のいろんな木を触って比較できるんですね。
もしかして、これって職員さんの手作りだったりします?
袴田さん
これは違いますが、ホール内の多くの展示が光本の手作りです。
すごくよく作られているでしょう。
彼、センスがいいんですよ。
小粥
すごい!
手作りのものが多くて温かみのある展示ですね。
体感できるからすごくわかりやすい。
小粥
このバネみたいな木はどうやって作ったんですか。
しなやかに曲がりますね。不思議な感覚で面白い!
子どもたちにはここの展示はものすごく人気だと思います。
光本さん
これは丸鋸で細かく切り込みを入れて作るんですよ。
子どもたちが力一杯曲げるので、だんだん短くなってますね(笑)。
触って遊べる展示が多いので遊ぶ感覚で楽しんでもらえると思います。
ゴム銃で射撃体験するコーナーはかなり人気ですね。
小粥
射的は子どもたちには堪りませんねえ。
小粥
あ!木こりになれる衣装もありますね。
光本さん
そうなんですよ。
木こりになって記念撮影が撮れるんです。
花粉をつけないスギがある?無花粉スギとは
小粥
袴田さんはスギの専門家ということで、普段はどんなことに取り組んでおられるんですか。
袴田さん
主に、優れたスギ・ヒノキの苗木を育成するための研究、簡単にいうと、品種開発や種子生産、苗木作りの改良ですね。
それから山に木を植えて森林をつくる、造林技術の開発と研究も行なっています。
小粥
造林もされているんですね。フィールドワークにも出られたりするんですか。
袴田さん
しょっちゅう行ってますね。私がおそらく一番ここに居ないんじゃないかと思うくらい、出掛けていますね(笑)
小粥
スギというと谷沿いや斜面に生えているイメージがありますね。
調査して歩くのは大変そうです。
袴田さん
山は平地よりも斜面が圧倒的に多いですね。
小粥
新しいスギの品種で注目されているのが「無花粉スギ」ですよね。
静岡県森林・林業研究センターさんも無花粉スギの開発に関わられているんですよね。
花粉症のみなさん待望の「花粉を作らないスギ」ということで、今回はこちらのお話をお聞きできたらなと思います。
袴田さん
無花粉スギの開発はもうかれこれ15年くらい前のことですかね。
無花粉スギというのを最初に発見したのが富山県なんですね。
富山県の森林研究所で熱心に研究をやられてる方がいらっしゃいまして、地道な調査によって無花粉スギというのが世の中にあるよというのがわかったんです。
小粥
発見は富山県なんですね。
袴田さん
無花粉スギといっても、やっぱり林業で使えないといけないというので、木材にも使用できるような無花粉スギの開発が始まりました。
まず、着目されたのが全国にあるスギの「精英樹(せいえいじゅ)」です。
精英樹とは、造林上の優良な特性を持つ木のことで、品種のようなものです。
精英樹は、すでに林業用に使用されていますね。
その精英樹の中で無花粉スギを作りましょうということになりました。
袴田さん
富山県でこういった発案があり、それを全国規模でやろうということになり、国や都県を含めてのプロジェクト研究になったんです。
全国のスギの精英樹の中で無花粉の遺伝子を持つものがあり、それら同士で交配をかけて無花粉スギを作るというのがプロジェクト研究の主な趣旨でした。
小粥
無花粉同士だとそもそも交配できないから、どうやって掛け合わせたんですか?。
袴田さん
要するに顕性(優性)と潜性(劣性)ですね。
有花粉の遺伝子は顕性、無花粉の遺伝子は潜性であり、その組み合わせで無花粉が出るパターンがあるんです。
小粥
なるほど。
潜性同士が組み合わさると無花粉ができる?。
袴田さん
そうです。
それで、顕性と潜性をヘテロ(※)で持っているものがあったんですよ。
(※遺伝子を「A=顕性」と「a=潜性」とした場合、Aaの組み合わせで対立遺伝子を持っている個体のこと。)
小粥
ヘテロの遺伝子組み合わせを持つスギでも無花粉のスギになる?
袴田さん
顕性の方が優ってしまうので、ヘテロでは花粉有りのスギになります。
しかし、そのヘテロの遺伝子組み合わせを持つスギ精英樹が静岡県で発見されたんですよ。
それを探し当てたのが、富山県の森林研究所の斎藤さんという方。無花粉スギ研究の第一人者です。
袴田さん
斎藤さんは全国規模でそういう精英樹を探していて、静岡県を含めたいくつかの県でヘテロの個体を発見しました。
静岡県でヘテロの個体が発見されたことによって我々にお声が掛かったという形です。
私たち静岡県はプロジェクトの中で神奈川県のヘテロ組み合わせのスギと交配する形で開発に取り組みました。
袴田さん
Aaのヘテロ同士を交配すると1/4の確率で無花粉が出るという理論で交配をしてみたところ、理論通りに無花粉スギができたんですね。
小粥
そもそもの話で申し訳ないのですが、スギは雄株雌株が別々ですか。
袴田さん
いえ、スギは一本の木に雄花雌花の両方がつきます。
小粥
交配させるというのは、同じ精英樹どうしで交配させるのか、精英樹を跨いで交配させるのか、どちらですか。
袴田さん
違う精英樹で交配させます。
小粥
違う精英樹で!ということは、本当に選抜隊といいますか、いろんな品種のヘテロ個体を探してきて、それを掛け合わせて、品質の良いスギを作るということですね。
それは大変な作業でしたね。
袴田さん
全国で何百何千のスギの精英樹があるんですけど、その中から「この精英樹はヘテロで無花粉の遺伝子を持ってる」というのを探し当てたのが斎藤さん。
小粥
斎藤さんはすごい情熱とガッツがある方ですね。
素朴な疑問なんですが、同じ精英樹でもヘテロ同士で掛け合わせれば無花粉はできるわけですよね。
袴田さん
できます。ただ、それは「自殖(じしょく)」といって自分同士で交配しちゃうので、あんまり遺伝的に良くないんですね。
自分同士や血縁が近いもの同士の交配は基本的にはあまり良くないです。
小粥
林業の苗の作り方について無勉強で恐縮なんですが、例えば「大井7号」という精英樹の苗を作りたい時には、「大井7号」同士を掛け合わせるんでしょうか。それとも別の方法がある?
袴田さん
苗を作るときにはいろんな精英樹が混ざってるんですよ。
その中でランダムに交配が行われます。
小粥
「大井7号」は今回の交配では「大井7号」だけど、一緒に交配を作った中では品種になっていない別の種類のものが何個もあるっていう状況ですか?
袴田さん
そうです。いっぱいあります。
現在、静岡県のスギ精英樹は51種類ありますね。
光本さん
先人たちが選抜してきた苗ですよね。
袴田さん
その51精英樹のうち、「大井7号」という精英樹が無花粉遺伝子をヘテロで持つというのが斎藤さんによりわかったんです。
その後に、その他にもう1精英樹、無花粉遺伝子を持っているのがわかりましたけどね。
小粥
なるほど。それで「大井7号」をもとに無花粉品種が作られたんですね。
袴田さん
静岡県の「大井7号」と神奈川県の「中4号」を親に、無花粉スギの兄弟が数百本できました。
小粥
無花粉スギの兄弟が数百本とその3倍の量の有花粉スギの兄弟が一回の交配で生まれると。
そして、無花粉スギの株から挿し木で増やせますということなんですね。
そういえば、普通のスギの苗というのは一般的に挿し木(さしき)で増やすものなんでしょうか。
袴田さん
苗の増やし方はふたつあって、ひとつは、交配かけて実生(みしょう)苗っていう、要するに種で増やす方法。
もうひとつは、挿し木(※)をして増やす挿木苗っていう方法があります
(※挿し木…枝などの一部を切りとり、根を生やして植える無性繁殖法。)
袴田さん
静岡県はスギの挿木苗っていうのはあんまり、というか、ほとんどやってないです。
実生苗がほとんどですね。
逆に、九州の熊本、大分、宮崎の辺りは、挿し木が主ですね。
小粥
地域によって違いがあるんですね。
遺伝的な多様性で言うと実生苗の方が豊富なんですか。
袴田さん
多様性は実生苗の方が豊富ですね。
小粥
挿木苗は、同じ性質のものが安定して増やせる?
袴田さん
ええ。ロットとして揃えることができますね。
小粥
スギは、地域によって遺伝的な特性が有るとか無いとかって聞いたことがあるのですが。
袴田さん
スギには「表スギ」「裏スギ」というのがあります。
「表スギ」っていうのがいわゆる太平洋側に育っているスギ、「裏スギ」っていうのが日本海側です。
それぞれ特徴があって、日本海側というのは雪がたくさん降りますよね。
雪が積もってしまうと枝が折れたり、場合によっては幹が雪の重みで折れたりしてしまうんですよね。
そういうことが起こらないように、「裏スギ」って言うのはちょっとスリムなんですよ。雪が付きにくいんです。
逆に、太平洋側は雪が降らないのでそういう心配もないから枝張りが大きいとかそういう特徴があります。
長年の遺伝的な積み重ねの中で、見た目的にも違いますし、遺伝子を調べてみても少し違うんですよ。
小粥
スギっていうと全部同じようなイメージがありますけど、やっぱり地域によって違うんですね。
袴田さん
その辺も無花粉スギの交配の時には考慮して、交配をかけるときに“太平洋側の都県は太平洋側の精英樹どうしで交配を”、“日本海側の県は日本海側のの精英樹どうしで交配を”という風にしました。だから、静岡県は神奈川県と交配しましょうとなったんですね。それは、遺伝子的な違いが将来影響してきてはいけないからという理由でやってます。
小粥
日本海側でスギ林を見たことはないので今度行ったときに見てみよう。
ブナとかも違いますもんね、太平洋側と日本側と。
面白いですね。
袴田さん
静岡県ではここの研究センターが主体となってたくさんの無花粉スギを作り、その中から優良な花粉症対策品種ができました。「静神不稔1号」「三月晴不稔1号」「三月晴不稔2号」「三月晴不稔3号」と名付けられた全部で4品種あります。三月晴不稔1号から3号は、東京都、神奈川県、富山県、材木育種センターとの共同開発になっています。
小粥
すでにこの4品種は、木材として利用価値の有無も評価されているんですね。
袴田さん
そうです。
国立研究開発法人の森林総合研究所 材木育種センターというところが「優良品種・技術評価委員会」というのを設置しています。そこにデータを提出すると、その委員会の有識者の先生方が集まって、林業的に大丈夫かどうかを見ていただくわけです。
それでOKになると晴れて品種となります。
小粥
既に品種となっているものと同じ場所で育てて、値に遜色ないかを見るんですね。
袴田さん
品種になっているものは、基準をクリアしているものになりますからね。
小粥
無花粉スギのこれらの品種はもう実際に県内もしくは市内に植られているんでしょうか。
袴田さん
私が試験で植えたものが静岡県内各地にあります。
まだ、市場生産と言いますか、県内の林業の世界で苗はまだ出回ってないですね。
ですが、私が試験で植えに行ったところで全部で約2,000本くらいはあるんじゃないですかね。
天竜の山とか島田の山、あとは伊豆にも植えたかな。
小粥
もう植えてから3、4年くらい?
袴田さん
もっと経ってます。10年ほど経っているのもありますよ。
その中で品種になったのはごく一部で、品種になってない無花粉スギも植わっています。
袴田さん
本日は無花粉スギの雄花をご提供させていただくということですよね。
この施設内にも苗を少し残してありますから、早速、取りにいきましょう。
小粥
ありがとうございます!
袴田さん
ある研究者の方がたくさんの雄花がついているスギの木を一本倒して、雄花の数を数えたんですよ。
そうしたら、約70万の雄花がついてたそうです。
ひとつの雄花に大体20万から40万くらいの花粉が詰まっているんですね。
70万の雄花におよそ30万ほどの花粉が入っていると考えて計算すると、1本の木から2,100億個ほどの花粉が飛ぶ計算になります。
小粥
2,100億個!
とんでもない数ですね。
袴田さん
でしょう。とんでもない数です。
さて、ここに無花粉スギの苗があります。
この中に雄花がたくさんついてるのがあると思います。
袴田さん
夏の間にジベレリンという植物ホルモンをかけておくと雄花がいっぱいつくんです。
小粥
本当は若いうちからこんなにつかないものですか。
袴田さん
本当はつかない。
強制的につけるように処理してあります。
この雄花を割って中を顕微鏡で見ても花粉は見えません。
比較対照として花粉がついているのもお渡ししましょうか。
袴田さん
これが有花粉のもの。
これもジベレリンで雄花がつくように処理してあります。
有花粉だと花粉が詰まってるから雄花が一回り大きくなります。
小粥
確かにふっくらと大きくみえますね。
電子顕微鏡で見てみるのが楽しみだなあ。
小粥
今後、県内のスギが世代交代して、次何植えようかってなったときに無花粉スギが植えられますか。
袴田さん
可能性はあります。そのためにはその体制を整えないといけませんけどね。
小粥
今は体制づくりの段階ですか。
袴田さん
まだそこまで行っていないくらいかな。
でも、国の方でも花粉症対策に力を入れ始めているので、少し追い風が吹いてきたかなとは感じています。
小粥
花粉で悩んでいる人はものすごくいると思うんですが、無花粉スギが植えられるようになったらかなり改善するのでは?
袴田さん
いや、そこまでは(笑)。スギって世の中にすごい量ありますから。それを植え替えるのは容易なことじゃないですよ。
微々たるものかもしれないですが、建物の近くのスギから変えていってもらえたらと思います。
小粥
無花粉の時代はもう少し先の話ですか。
袴田さん
静岡県は無花粉ではないけど、花粉の少ないスギっていうのは植えてきたんですよ。
少花粉のものなので、普通のやつよりは少ないけど、残念ながらそれでも花粉はつきます。
小粥
僕も小さい頃、花粉症に悩まされていました。
大学に進学して寒いところで生活するようになって、その辺は寒すぎてスギが無くカラマツばかりだったので花粉症は緩和されて、それ以来はあんまり花粉症にはなってないですけど。将来的に花粉症が緩和されたら喜ぶ人たくさんいるだろうなあ。
天竜スギってどんなスギ?
小粥
浜松のスギとして有名なのが「天竜スギ」ですよね。
光本さん
天竜スギは浜松の木材調達の要で、天竜川から木を流して山から搬出していたそうですね。
昔から天竜の山にはスギが植えられていたそうなんですが、元々は「治山治水」ということで、山を守るために木を植えていたんですね。
その資源を有効活用しようということで林業が非常に盛んになって、そのおかげで木材産業が栄えていったと言われています。
光本さん
最近の研究で、天竜のスギはちょっと他と比べて材質的に硬いという研究結果もあります。
そういうこともPRして普及していきたいですね。
小粥
材質的硬いというのは、どういったところに由来しているのでしょうか。
光本さん
地質とかそういうところもあると思うんですが、まだそこまでわかっているわけではないです。
あくまで、あるものの材質を調べたら硬かったっていう結果でしかないです。
要因まではわかっていませんね。
小粥
まだ詳しい要因は判明していないんですね。
そうだなあ。例えば、生育がゆっくりで年輪が多いとか?
光本さん
そう言ったこともあるとは思います。
ただ、硬いっていうのが単純に年輪が詰まっていれば硬いというわけではないんです。
静岡県には51の精英樹があるという話があったと思いますが、年輪幅によらずにその精英樹によって硬さが決まってくるという研究結果もあります。そういった精英樹の違いも要因としてはあるんじゃないかなと。
袴田さん
科学的な話ではないかもしれませんが、歴史的に昔から先人たちが経験的に材質の良い木から種を取っていたなどの要因はあると思うんですね。
先人たちのおかげで遺伝的に材質の良いスギが生まれてきたっていうのはあると思います。
小粥
なるほど。自然に良い材質の木が選抜されていったのですね。
袴田さん
先ほど九州で挿し木が盛んだと申しましたが、おそらく、九州は挿し木で苗を増やしていった歴史の中で、挿し木に最適な品種が選ばれていったのだと思うんですよ。長年の経験の中で積み重なってそういう品種ができたんだと。今もそれが伝統的に続いているんですね。
小粥
地域による、育て方や苗木の作り方の違いというのは伝統的なものなんですね。
袴田さん
作り方は、その地域の伝統がありますね。
全国の地域それぞれに、〇〇林業とか〇〇スギというように地名を冠したものがあります。
例えば、九州だと宮崎の飫肥(おび)スギ、奈良や京都ですと吉野スギとか北山スギなどが有名です。三重の尾鷲林業なども有名ですね。
袴田さん
天竜スギというのも全国的には有名ですよね。
では、天竜スギというとどんな特徴があるのかなっていうのを一言でいうと“特徴がないこと”なんですよ。
小粥
“特徴がない”のが特徴なんですね。
袴田さん
どういうことかと言いますと、天竜という場所はスギにとって「気候がいい」、「土地がいい」。
天竜の環境はスギにぴったりなんです。だから、基本的には何をやってもどう育っても上手くいっちゃう。
袴田さん
他の地域だとそうは上手くはいかないんで、その土地の環境に合わせてそれぞれ特色を出して林業をやってるんですね。
そういった理由で、天竜スギには特徴がないと言われているみたいです。
私も何かの文献で読んだだけなので定かではないですが、なるほどなとは思います。
小粥
スギに適した気候環境なんだ。
雨が多くて暖かくて。
袴田さん
静岡県でも天竜で育てるのと伊豆半島で育てるのではやっぱりちょっと品質が違うんですよ。
同じような品種を育ててみると天竜の方が成長が早いですね。
取材を終えて
興味深いお話がたくさん聞けましたね。
印象に残ったのは、なんといっても無花粉スギ。
なんと、日本国民の約4割が花粉症だというデータもあるそうで、毎年特に春にマスクが手放せないよという方も多いのではないでしょうか。
そんな方々にとって、無花粉スギの誕生は待ち望んだ朗報ですよね。
ただ、スギが材木として使用できるほど成長するには30年から50年以上の時間がかかるそうですので、「山の大半が無花粉スギです」となるのはもう少し先の話になりそう。
今からその未来を待ち遠しく思います。
ご提供いただいたスギの雄花や材木をミクロの視点で観察・解説する後編も是非、ご覧ください(後日公開予定)。
毎年、スギ花粉症に悩まされている方も読んでみてくださいね。スギのことをもっと深く理解できますよ。
森林・林業についての研究をもっと知りたくなった方は静岡県森林・林業研究センターのYoutubeチャンネルがおすすめ。
個人的に面白いなと思ったのは、「静岡県の春のスギ花粉予報」。
令和6年の予報の動画もアップされていますので、気になった方はぜひチェックしてみてくださいね!
◆ 取材協力
静岡県農林技術研究所 森林・林業研究センター
◆ 記事執筆
黒川夏希(ウィスカーデザイン)