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「ギザギザ」と「ツルン」、葉っぱの形を観察してみた

今年の夏は特に暑かったですね!
浜松市は日本の歴代最高気温に並ぶ「41.1℃」を記録し、話題になりました。

さて、太陽光が降り注ぐ中、植物たちはその光を葉で受け止めて、「光合成」しています。
光合成とは光エネルギーを利用して、水と葉から取り込む空気中の二酸化炭素を材料に炭水化物(食べ物)を作ること。

この強い日差しも、植物にとっては無くてはならない資源なのですね。

さて、今回は光合成のメイン工場である葉の形に注目してみましょう。

下に自然観察園に生える「コナラ」と「クスノキ」の葉を1枚ずつ並べてみました。
比べてみると、樹種によって葉の形はずいぶんと違うことに気が付きます。
コナラの葉の縁はギザギザ、クスノキはツルンとしています。
この葉の形の違いには、どのような意味があるのでしょうか?

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葉の縁のギザギザを難しい言葉で鋸歯(きょし)、反対に葉の縁にギザギザがない様子を全縁(ぜんえん)と言います。

鋸歯があることのメリットの一つとして、光合成効率の向上が知られています。

光合成が盛んな葉の表面では、二酸化炭素がどんどん吸収され、二酸化炭素濃度が低くなり、光合成が進みづらくなります。
この時、葉の周囲の長さが葉の面積と比べて大きくなるほど、他の場所から二酸化炭素が補われやすくなり、光合成の阻害が起こりづらくなります。
つまり、鋸歯があることで葉の表面の空気循環がよくなって、より多くの二酸化炭素を吸収することが出来るのです。

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一方のクスノキは、なぜ鋸歯を作らないのでしょうか?

クスノキはもともと雨の多い高温多湿な地域に自生しています。
葉に雨水が長時間ついていると、葉の表面から養分が流れ出てしまいます。
そのため雨の多い地域では、葉が全縁で雨水を落としやすい水滴型の樹種が多くなります。

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ここで、同じく自然観察園に生える「ヒサカキ」と「サカキ」の葉も並べて比べてみましょう。
ヒサカキには鋸歯があり、サカキは全縁ですね。

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さて皆さん、神棚やお墓に榊をお供えした経験はありますか?
その榊に鋸歯はあったでしょうか? それとも全縁でしたでしょうか?

東日本では鋸歯のある「ヒサカキ」を、西日本では全縁の「サカキ」をお供えに使うことが多いです。

「サカキ」は中国や台湾など高温多湿な地域に自生します。
日本では西日本を中心に分布し、東日本ではあまり生えていません。
そこで東日本では、全国的に分布する「サカキ」に似た「ヒサカキ」を伝統的にお供えに使ってきました。

高温多湿な気候に適応したであろう全縁で水滴型なサカキの葉。
法事の際にぜひ注目して、生活の中で見られる鋸歯のある・なしに思いを馳せてみてください。

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私たちが普段何気なく見ている葉っぱですが、葉の縁を「”ギザギザ”と”ツルン”」のどちらにするかということは、植物が生きていく上で大きな選択になりうるのですね。

さて、次回はより深く鋸歯の姿を観察してみましょう。

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参考資料
小池孝良. 葉の形から知る樹木の環境適応と光合成作用. 森林科学 45, 4–10 (2005).
矢吹萬壽. 植物の動的環境. (朝倉書店, 1985).

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浜松科学館自然観察園は地域の方々のお散歩ルート。歩道は端から端まで105歩。普通に歩けば1分足らずで通過してしまいます。 その1歩1歩にもたくさんの生き物がいて、関わり合い、科学的な事象が起こっています。「小さな森での小さな出会い」を少しずつお届けします。