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複数枚に見えるけれど、実は1枚な葉っぱの話

前回は葉の鋸歯の有無に着目して、クスノキとコナラの光合成の戦略を見てきました。
今回は、秋に美しく紅葉するイロハカエデ、ナンテンの葉も並べて一緒に比較してみましょう。

それぞれの葉を「1枚ずつ」並べましたのでご覧ください。

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ん?何かおかしいですか?
おそらくナンテンの葉に違和感があると思います。

葉を1枚ずつ並べたはずですが、たくさんの葉が付いているように見えます。
実は間違いではなく、これで「1枚の葉」なのです。

葉の1枚は、落葉するときに茎や枝などからはがれる部分(離層)で定義されます。
つまりナンテンは落葉するときに小さな葉(小葉)ではなく、図示している全てが一緒に脱落するのです。

このように葉が複数の小葉で構成されている葉を「複葉 ふくよう」、一方で小葉がない純粋に1枚の葉を「単葉 たんよう」にと言います。

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複葉は、鋸歯が発達したものと考えられています。

鋸歯がないクスノキ、鋸歯があるコナラ、鋸歯の一部が深く切れ込んだイロハカエデ、そして鋸歯がさらに深くなり小葉が生まれたナンテンといった具合です。
この様に単葉と複葉は一見すると全く別物ですが、鋸歯の大小のバリエーションで理解することが出来ます。

一つの形質も、突き詰めることで劇的な形態的な変化を促すことがあるのですね。

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ナンテンは他の3種と比べて樹高が低く、枝の張りも大きくありません。
そのため出来るだけ1枚の葉を大きくしつつ、光合成の際に空気の交換を行いやすい複葉を形成したのかもしれません。

他にも複葉のメリットとして、強固な枝を作るよりも省エネで葉の面積を増やすことが出来ること、また小葉の角度調節によって光を効率的に受けることができるといった点が知られています。

葉の形のメリット、デメリットは多岐にわたり、現在も分かっていないことが多くあります。
前回、今回でご紹介した4種の葉の形態も光合成とは全く関係ない別の要因が決定している可能性もあります。

ぜひ野外で実際に樹木の葉の形を観察して、形態的な多様性の沼に足を踏み入れてみましょう (^^♪

葉の形の観察について、浜松科学館Youtubeでも紹介しています。
もしよろしければご覧くださいませ~ ↓

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参考資料
Ehleringer, J. & Forseth, I. Solar tracking by plants. Science vol. 210 1094–1098 (1980).
Givnish, J., T. On the adaptive significance of leaf form. Top. Plant Popul. Biol. 375–407 (1979).
小池孝良. 葉の形から知る樹木の環境適応と光合成作用. 森林科学 45, 4–10 (2005).
矢吹萬壽. 植物の動的環境. (朝倉書店, 1985).

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