働き手が主役!ユニバーサル農業【浜松ミクロ散歩「ミニ野菜」前編 】
「浜松のことをもっとよく知りたい!」
好奇心旺盛なスタッフが浜松科学館を飛び出して、浜松各地を訪問。
訪問先で出会った方々とふれあい、こだわりの商品などを科学館にある電子顕微鏡で観察して、ミクロから浜松を探っていく企画です。
今回研究するのは、ミニ野菜・ベビー野菜。
ミニ野菜とは、その名の通り、成熟した姿が通常のサイズより小さい野菜のこと。代表的なものでいうと、ミニトマトやミニちんげん菜が有名ですね。
ベビー野菜とは、ベビーリーフや芽ねぎのように、成熟しきる前の小さいうちに早採りをして食べることができる野菜を指します。
取材にご協力してくださったのは、ミニ野菜を主に栽培する「京丸園株式会社」。
「京丸姫シリーズ」と題した、姫ねぎ(芽ねぎ)、姫みつば、ミニちんげん、姫ちんげんを扱っており、その中でも「姫ねぎ」は、芽ねぎの全国シェアの7割を占めているんですよ。
“姫”のような可愛らしい野菜たちがどのように育てられているのか、京丸園の代表を務める鈴木厚志さんと、奥様で総務取締役の緑さんにお話を伺ってまいりました。
システムで作物の成長を最適化。スマート農業実践のハウスを見学
小粥
ミニ野菜は、普通の野菜と品種が違うというわけではないんですか。
厚志さん
そうですね。野菜によっても違うけど、芽ねぎで言うと、系統で言えば青ネギ系のもの。ちんげん菜はというと品種が違うものだね。
姫ねぎは青ネギの早採りで、ミニちんげんはミニ用の品種。
厚志さん
ネギって種から発芽して一本目、二本目、三本目…とだんだん成長するんですけど、うちの姫ねぎっていう商品は、種から出る最初の一本目が商品になる。
小粥
理科っぽく例えると、種から出た最初の双葉みたいなものですか。
厚志さん
うん。葉っぱが2枚の植物で例えるならそうだね。ネギは一本だけですけど。
小粥
種から出る最初の一本というのは、やはり柔らかかったりするんですかね。
厚志さん
そうだね。細いし柔らかい。
だから、食べやすいと言われています。
これはみつばの苗。
小粥
かわいい苗がいっぱいですね〜。基本的には全て水耕栽培なんですか。
厚志さん
うちはお米もやっていて、そちらは土耕ですが、「姫シリーズ」は、基本的には水耕栽培ですね。
小粥
土耕と水耕の違いって大きく言うとどんなところなんですか。
厚志さん
水耕はシステム農業になるので、効率性とか生産性に特化してます。
味とか栄養価は土のほうが良いので、僕ら水耕栽培の役割はいかに安定供給できるかってところ。土耕は日数がかかるけど、イコールすると、その日数は味とか栄養価に比例しているものなんですよね。
水耕はどれだけ速く、どれだけ計画的に、みたいなほうに特化してるのかな。
小粥
そういう意味では、ミニ野菜は水耕栽培に適しているのかもしれませんね。
厚志さん
そうそう。均一なものを大量生産するっていう。
水耕は農業の中でも工業的な一面があるかもしれないね。
僕らは太陽光を利用していますが、これが閉鎖的空間で栽培を行うと完全な植物工場になるって感じ。
厚志さん
ただ、自然から切り離すと、光の調整とか温度湿度の管理とかにリソースがかかるんだけどね。
広い農業という分野の中でどこの部分をやりますかってことだね。家族経営とか一人でやる農業だったら自然と一緒に育てる土耕もいいと思いますが、従業員のお給料を稼がなくてはいけないってなるとビジネス的な農業の分野に僕らは方向性を決めたってことだね。
緑さん
普通、土の中なので根っこが見えることってないじゃないですか。でも、水耕栽培は根っこが見えるので面白いですよね。
小粥
確かに。自然の状態だとなかなか根っこまでは見られないですよね。
このみつばは何日目くらいなんですか。
厚志さん
これで20日目ぐらい。
これはもう明日収穫ぐらいです。
小粥
根っこも葉っぱもぐんぐん育ってますね。
厚志さん
根の先っぽで肥料を吸い上げてくれるもんで、ここが痛むと成長に影響が出るんです。
根先の頭の部分は僕らも細心の注意を払って観察してます。
厚志さん
水なんかも井戸水を使ってて、暑くなってきた時に暑すぎると一斉に発芽しなくなっちゃうから、適温に保つために地下水を流してる。
ある意味、自然の恩恵を利用しながらやってるね。
小粥
光も太陽光を利用してますよね。LEDを利用しなかったのは理由があるんですか。
厚志さん
システム農業にはデメリットっていうのもあって、定射型にしちゃえば全部コントロールできるんだけど、逆に、その分の経費がかかる。
光源を光らせるためのエネルギー分を、どうしても価格転換できないのが今の現状なんです。その経費を込みにすると、価格が高くなりすぎちゃう。
小粥
なるほど。人工にするとコントロールしやすくなるけど、それはそれで経費がかさむのか。
京丸園さんは、明かりは太陽光だし、水温は井戸水で、環境負荷がかからないようになってるのが素晴らしいですね。
厚志さん
この環境が採算のラインとちょうど合ってるわけですよね。
今までは、問題が二点あって、一点目は温度のコントロールが難しかった。暖房を入れる等で暖めることはできたんだけど、冷やすことはできなかったんですよ。
二点目は、湿度コントロールができなかった。
ですが、ミストの設備を設けたおかげで温度を下げることも湿度のコントロールもできるようになったんですよね。
厚志さん
植物は光合成で大きくなっていくので、温度が高いだけじゃ気孔が閉じちゃう。そこに適切な湿度を与えなくちゃいけない。
湿度が適切であれば、温度が高くても気孔は開くので、夏でも強い作物ができる。(※ みつばの旬は3月〜4月、または12月のため、真夏の栽培は難しい。)
だから、ミスト設備にコストがかかっても、夏にもいいものができたら売れる、その採算ラインのバランスですよね。
厚志さん
ここの土地は、4mくらい掘れば地下水が出てくるんですけど、その水は飲めないので、さらに100mくらい深く掘った、飲料水としての検査をパスした水を使用しています。この水に肥料を入れて与えています。作物はこれを吸収して大きくなる。
みつばは、収穫を終えたらまた同じ場所に新しい苗を出して、また収穫まで育てるんですけど、同じ場所で年間で20回収穫することを目指して栽培しています。生産効率で言うとかなり回転率が高いですね。
小粥
浜松は日照条件もいいし、地下水もあって、野菜がよく育ちそうですね。
厚志さん
そう。農業にとって最高の場所なんですよ。
特に浜松は、ミネラルがしっかり入った豊富な地下水もあるし、平地で、日射量がある。
露地は風が強いから痛みが出ちゃったり、体感温度が下がったりするけど、風さえ避けてあげる施設園芸であれば最高のエリアなんじゃないかなあ。遠州で温室メロンが栄えたのもそういった理由があったと思います。
浜松は冬でも暖房入れなくても5度でとまりますから。雪の降る中で5度にしようって言ったらすごい暖房入れなくちゃちゃいけない。それだけでだいぶ得してる。
厚志さん
土に植えたら自然と発芽するに任せるけど、水耕栽培っていうのは、技術によってそれをコントロールできる。自然環境から切り離すことによって植物をコントロールする側に立つので、その技術を高めることで、発芽率や成長度合いの均一化にチャレンジできる。
そこが自然農業と人工農業の大きな違いだね。
小粥
確かに言われてみると、ここにある作物は一本残らずみんな元気だ。
厚志さん
発芽を終えて、ここに植えたらもうほぼ手放し運転。機械が遮光や気温のコントロールをしてくれる。だから、苗の段階まで、いかに均一に発芽させるかだね。
厚志さん
うちではAIカメラも導入しています。作物が大きくなっていってるのを横からカメラで見ていて湿度と温度のデータを取って「何が影響してこうなってるか」とか「あと何日でどのくらい成長しそうか」という出荷日予想をしてくれます。
小粥
AIが判断するためのデータはどこから入手してるんですか。
厚志さん
ここにあるセンサー類で、日射・温度・水温・気温を見てます。
小粥
毎年記録しているデータで判断しているんですね。
厚志さん
現状で言うと、一番影響してるのは最低温度。これが作物の成長スピードに関係していることがわかってきています。
最初が肝心?人工栽培の腕の見せ所 発芽室
厚志さん
ここは発芽室。今ここにあるのは、種を蒔いたばかりの状態ですが、これを一斉発芽させます。
小粥
この白いマットも手作り?
厚志さん
そう。僕らのオリジナルの型を使ってます。このウレタンに水を含ませてから種を蒔きます。
このウレタンは一枚300個のコマに分かれて切られていて、その中心に種が落ちるように機械が自動で蒔いてくれる。
厚志さん
1コマのウレタンに30粒ぐらい、みつばの種を撒いて発芽させていくっていう。
小粥
すごい。
ここからみんなで発芽するように温度を管理していくんですね。
厚志さん
温度が高すぎると早く発芽しちゃうからスタートは抑えめに「ゆっくりゆっくりね」って。
そうするとみんなのスタートが揃うので、みんな揃って発芽したら暖かいところに移して一斉に成長を促す。
厚志さん
種の断面も面白くて、保存する時には限りなく水分を無くしておくんだけど、発芽する時には水を思いっきり吸ってから成長する。
休眠する時と活動するときの種の状態も明らかになってきてるんですよ。
厚志さん
みつばの発芽には光も必要だから、光も用意しなくちゃいけないんですよね。発芽室の光は社員が手作りで作ってるんですけど。
最初の一番大事なところだけは自然界と分けて人工的な植物工場にして、発芽をそろえて外に出すっていうやり方。
厚志さん
僕らの技術は、10個の種を蒔いたら、どれだけ10個を平均的にいっぺんに発芽させることができるかってところが腕の見せどころ。土耕ではあまりやらない技術だね。
小粥
種を選別するんじゃなくて、技術でもって全てを均一な状態で発芽させるって考え方なんですね。
機械と人間をマッチングさせる、働き手が主役のユニバーサル農業
小粥
なぜミニ野菜を作り始めたんですか。
厚志さん
そうだねえ〜。お客さんの要望っていうのは第一なんですけど、戦略的にそうしたっていうのもあるかな。
今の農業の現状っていうのは、みんなと同じものを作るから競争が始まって、価格競争になって、農家が野菜に値段をつけられないと言うのが問題になっている。
だったら、ここにしかないものを作って自分たちが定価販売できるようなものを作りたいっていうのが一つあって。
今の農業者の人たちってどこもそうですけど、人手がないのであんまり細かなものってやりたくないんですよね。ミニにするっていうのは手がかかることだから。特に、収穫物の重さイコール幾ら で販売する人たちは、なるべく大きくして売った方が楽なんだよね。
厚志さん
ミニにするっていうのは競争が起こらない代わりに手が掛かる。そこを僕らはユニバーサル農業っていう、誰でも農業ができるようなシステムにしたことで、障がいを持っている方や高齢者の方の手も借りられるようになった。ミニ野菜は軽いから働く人にとっても扱いやすい。
そういう流れがあるんだけど、ちょっと難しくなっちゃうよね(笑)もちろん、ミニ野菜が好きってのもあるよ。
小粥
ユニバーサル農業っていう考え方は新しいですね。
厚志さん
ビジネスとしての農業になるとたくさんの人が関わりますよね。となったら、いかにそこを効率化できるかということが大事。
僕らのコンセプトである「ユニバーサル農業」は、障がいを持っている人でも出来る仕組みを作れば、彼らを含めた全員がもっと働きやすくなるっていう考え方。
職場の中にユニバーサルデザインを作り出せば、働き手は僕らの周りにたくさんいるんですよね。
厚志さん
従来の障がい者雇用の考え方は、彼らを訓練して出来るように変えようって発想。ただ、それをしちゃうと結局無理なことも出てきちゃうので、そのままでは働けない人が来ても働けるような仕組みを我々が作るって考え方。そういう考え方を可能にするために必要なのが、スマート農業。いわゆる、機械化なんです。
小粥
人が環境に合わせるんじゃなくて、環境を人に合わせるんだ。
厚志さん
機械っていうものと人をマッチングさせる。
そのままでは働けない、けど、「目が見える」「指先だけは動く」っていう人達がいて、その人たちの出来ることを最大限活用するための機械を持ち込んで、仕事においての役割を果たせるような仕組みを現場に作れば、いろんな人が働けるよねって考え方。
うちの機械は既製品でなくて、全てオリジナルです。
小粥
機械を導入する時ってとりあえず機械を入れてから考えようってなりがちですよね。
そうなると、逆に使いこなせるまでは、機械に人間のリソースを無駄に使ってしまうケースもある。
厚志さん
効率化だけを追うと、“人”ってものは蔑ろになって無人の機械ができたりする。でも、機械作りにもコンセプトを持てば、出来上がる機械の形は全く違うものになるんですよね。
僕らのコンセプトは「人を活かす機械」っていうふうにしてる。設計段階で、「 “目の前にいるこの人” の能力を引き上げることができる機械を作ってくれ」ってオーダーになる。
必ず、対象者がいるんですよ。単に合理化するだけの機械にはならない。
厚志さん
機械づくりをやっていく中でわかったのは、全自動の機械は必要なくて半自動で良いってこと。目が見えるっていうこと、指が動かせるっていうことが、どれだけすごいことなのかって改めて思うんですよ。
全自動の機械を作るとなると、人間の目の代わりとなるモニターにカメラに、センサーとか、かなり高性能で高額な機械になりますよ。
その能力を持つ人がいるならその人にやってもらって、それ以降を機械にやって貰えばいいじゃんって。
厚志さん
例えば、このトレイを洗う機械。最初はブラシを回転させるだけの機械だったんですよ。
そうすると、回転するブラシに、トレイを押し込む作業が必要になる。
厚志さん
この機械の進化型は、水を出してボタンを押すだけ。これだけでもう洗えるようになった。
先程の機械は、立ってしか作業できないけど、これは座ってできる。
どんな人が使うかで仕様が変わってくるんですよね。
厚志さん
機械設計の方や作業療法士の方に入ってもらって開発しています。
コンテナにトレイを52枚入れるっていう決まりがあるんですが、数を数えるセンサーを備えて52枚トレイが通ったら音楽が鳴るような仕様にする。そして、作業者に「音楽が鳴ったらコンテナ交代ね」って言えば、正確に簡単にできる。そんなふうに、機械っていうのもコンセプトが大事なんですよね。
小粥
科学館も今ユニバーサルデザインを取り入れるためにリニューアルを計画しているんですが、現場のいろんな立場の方や当事者の意見を取り入れているのがすごく参考になります。
厚志さん
この進化型の機械を設計する時には、右に麻痺がある子が使うために設計をお願いしたんです。その子が進化前のブラシを回転させるだけの機械を使う時には、動く方の手だけを使ってたんだよね。
でも、作業療法士の方たちと「どうせだったらリハビリも兼ねて、右手を動かしたほうがいいでしょう」って話になって。
でも、必要以上に負担はかけられないから、あえて右手を軽く使うような、掴んで置くだけの仕組みを作ろうって。
小粥
そんなこともできるんですか。
厚志さん
今までリハビリセンターで治療してた人たちが、働きの現場で治療できるっていうことになれば、働きの意味が変わってくるじゃないですか。
そういう仕組みが作れたらいいなあと。
厚志さん
これは虫トレーラー。
小粥
虫トレーラー?
緑さん
虫が取れるっていう(笑)「取れるら」っていう遠州弁の訛りを取り入れて。
小粥
あ〜!なるほど(笑)
なんか下の方が戦車みたいですね。
緑さん
この下をキャタピラに改良したのが今年。それまでは自転車の車輪を使ってたんですけど、方向転換が大変で。
キャタピラだと自由に動けるのですごく便利です。
換気扇でエアーを取り込んで、ネギの葉についた虫を吸い込むんです。
小粥
オリジナル設計がすごいですね。
厚志さん
矢崎化工さんってとこにアイディア出していただいてお願いしています。
虫トレーラーもユニバーサルデザイン。虫トレーラーはゆっくり動かさないと虫がしっかり取れないから、動作がゆっくりな障がい者の方に向いてる。
普通は仕事は早い方が褒められるけど、ゆっくり作業するのが得意な方が褒められる仕事。
小粥
これも特性を活かす仕事作りですね。
改良を重ねてこの姿になったんだ。
厚志さん
これは4代目くらい。もっと楽になるならばどんどん改良していくよ。
小粥
色々見せていただきましたけど、ミニ野菜を作り始めたことや、そのために必要な人材のための仕組みづくりとか、それぞれのピースがかっちりはまって、大きな循環ができてるなって。
ミニ野菜の事業を始めようとした時からそこまで思い描いていたんですか。
厚志さん
いや〜、そういう意味では一気にピタピタっと組み込まれたって感じ。
僕が、働き手や収益の計画を立てていた、いわゆる、バブルの頃は、求人しても人が来ないってところがスタートで。
そういう状況だったから、障がいを持っている方や高齢者の方しか集まらなかったんだよね。だから、来てくれたこの人たちでやっていくしかないじゃんって。
でも、重たい物を運んだりとか重労働はさせられない…、どうしたらいいんだろうって。
厚志さん
もっと小さいものや軽いもの、指先だけで出来る仕事だったらいろんな人が出来るじゃん、と。
そんな時にお店の方が「芽ねぎっていうのはありますか」って声かけてくださったりだとか。最初、芽ねぎを見て「こんなちっさいの!?…いいじゃん!」って。
一気にピースが埋まっていく感じがしたね。
小粥
厳しい状況だったからこそ工夫して乗り越えて来たんですね。
困難な現状にあっても諦めずにアンテナを拡げて、できることを柔軟にやってみようってところが素晴らしいなあ。
取材を終えて
今回の取材でも、いろんな学びを得ることができました。
スマート農業というと人の手を離れてロボットが栽培してるようなイメージがあったんですが、全くそんなことはなく、あくまで主役は人。
働く人を大切にする鈴木さん夫婦の愛が、現場の職員さんにも伝わって、そして、栽培される野菜にもしっかり注がれている、そんな気がしました。
小粥
実は、普通サイズの野菜を顕微鏡で見て撮影してきました。
これは青ネギの画像なんですけど、これは根っこの写真です。
厚志さん
へ〜!すごいね。
小粥
ネギの葉っぱがすごく綺麗だったんですよ。
これが葉っぱの側面。これ、気孔なんですけど、この気孔の入り方が菱形の模様の合間に配置されててデザイン的に綺麗だなって。
厚志さん
確かにそうだね。
一定の法則みたいなものがあるんだね。
断片を見るだけでこういうのが見えるの?なんか顕微鏡で見るための処理をしてるの?
小粥
電子顕微鏡は真空にしないといけないので、機械の中にそのまま入れると水分が奪われて萎れちゃうんです。なので、それをコーティングするような液体をかけてから見てます。
小粥
電子顕微鏡でミニ野菜を見たら、普通の野菜となんか違った面があるのかなと。
ちんげん菜も普通のサイズを顕微鏡で撮影してきたんですよ。
これが断面。これは葉の部分。これは道管かな?
気孔はネギに比べたらランダムな印象。
厚志さん
通常サイズのちんげん菜の方が葉が薄いから、写真に写る気孔の数は少ないのかもしれないね。
いいなあ。この画、欲しいなあ。面白い。
ちなみに、顕微鏡の写真が白黒の理由っていうのは何かあるんですか。
小粥
普通の顕微鏡は僕らが目で見える光でみるんですけど、乱暴に言ってしまうとそれだと波長が荒いんですよ。電子顕微鏡は、電子線って電気に近いものなんですが、これは波長が細かいので細かいものが見えるんです。
でも、電子線は僕らの目では見られないので色がついてないんです。なので白黒になってしまうんですね。たまにカラーのものもありますが、あれは人間が着色したものです。
厚志さん
へ〜、そうなんだ!なるほどね。
着色はできるけど、あくまで本当の色かどうかはわからないってことか。
顕微鏡の仕組みにも好奇心旺盛な厚志さん。
柔軟な発想や情報収集力はきっとこの姿勢から培われたものなのでしょうね。
そして、小粥の方も今回の研究テーマがなんとなく見えてきたようです。野菜が織りなす構造美、見てみたいですね!
果たしてベビー&ミニ野菜と普通の野菜に違いはあるのか?
小粥による解説記事「記事タイトルが入ります」是非、読んでみてくださいね。
さらに、厚志さん著の「ユニバーサル農業 京丸園の農業/福祉/経営」と、ユニバーサル農業の取り組みを絵本にした「めねぎのうえんのガ・ガ・ガーン!」の2冊を浜松科学館の図書コーナーに寄贈いただきました。
ユニバーサル農業について深く知りたい方はぜひ読んでみてください。実際にあったエピソードを織り混ぜ、わかりやすく解説されていますよ。
絵本「めねぎのうえんのガ・ガ・ガーン!」は、障害のある子どもが読書を楽しむ助けとなる作品として『2023年IBBY(国際児童図書評議会)バリアフリー児童図書』に日本支部から推薦を受けたそうですよ。
当館の図書コーナーにてお手にとっていただけますので、来館の際はぜひ読んでみてくださいね。
◆ 取材協力
京丸園株式会社
◆ 記事執筆
黒川夏希(ウィスカーデザイン)