気になるものをとことん探究!【自由に研究ラボ2024】
はじめに
「自由に研究ラボ」は子供たちが気になる材料を持ち込んで、科学館の実験機器(電子顕微鏡、生物顕微鏡、実体顕微鏡、解剖セットなど)を使って自由に探究する企画です。
もちろん、私たち科学館職員も貸し切りです。職員はマンツーマンかそれに近い形でサポートします。補助をしたり指導するというよりは、一緒に探求すると表現した方が近いでしょうか。
目的地はなかったり、仮に設定してもまた新しい目的地ができたりと、決まったルートが無い極めて特殊な企画です。限られた時間の中で、子供たちと一緒に未踏のジャングルを開拓するかのように突き進みます。
ここからは、子供たちが観察したこと、気づいたこと、それに対する科学館職員のお返事をご紹介します。
珠玉の観察記録24件をお楽しみください。
24件の観察記録
きゅうりが絡まったトマトの茎はなぜトゲトゲがあるのか
佐々木 太誠
観察したもの:きゅうりの茎、きゅうりが絡まったトマトの茎、きゅうりが絡まっていないトマトの茎
◆ 気づいたこと
ぼくの庭できゅうりが絡まったトマトの茎にトゲトゲが出来た。
何でトマトにトゲトゲがあるのか気になったので、顕微鏡でみた。
顕微鏡でみてみるとトゲトゲがない茎のトマトもとげがあることがわかった。
きゅうりのトゲトゲは鋭くて当たると痛い理由もわかって良かったです。
◆ 科学館職員のお返事
すっごくトゲトゲだね!僕はよくきゅうりを食べるから、果実にトゲがあることは知っていたけれど、茎にもこんなにりっぱなトゲがあるんだ。よく見ると、トゲは先っぽだけとても細くなっているね。そして先っぽ以外の場所はザラザラしているね。もしかしたら、ささりやすくて、抜けにくい効果があるかもしれない。野菜ってやさしいイメージがあるけれど、攻撃的なちょっと意外な一面が見られたね。
たねのなかはどうなってるのかな?
上遠野 泰史
観察したもの:コスモスのたね、ひまわりのたね
◆ 気づいたこと
コスモスもひまわりもたねのからは、かたくてひょうめんはつるつるだったけど、なかみはやわらかそうだった。ぼくは、たねの中には、みどり色のはっぱの形をした小さなめの赤ちゃんが入ってるんだと思っていたけど、小さなおこめのつぶつぶみたいなものが入っていた。メダカのたまごみたいに、このつぶつぶが赤ちゃんのもとになるのかな。
◆ 科学館職員のお返事
たねは、水やおんどのじゅんびができると、からをやぶってめをだします。たねから出ためは、光があたるとみどり色になります。たいようの光をつかってえいようをつくるためです。
たねには、はっぱやねっこになるぶぶんや、しょくぶつが大きくなるためのえいようがはいっています。かたいからは、めが出るじゅんびができるまで、だいじなたねのなかみをしっかりとまもっているんですね。
美味しいお米
永井 優大
観察したもの:米(つや姫)
◆ 気づいたこと
精米したお米を観察しました。胚芽が取れた跡はクレーターみたいに凹んでいて、50倍で見るとざらざらで無理矢理胚芽をはがしたみたいで真ん中に何か刺さっていました。2000倍を見ると、丸くブツブツしていて砂利みたいでした。胚乳の主な成分はデンプンで、お米が成長するときのエネルギー源になり、僕たちがいつも食べるところです。丸くブツブツしているように見えたのは、デンプンなのではないかと僕は思いました。
◆ 科学館職員のお返事
確かに丸い粒はデンプンかもしれないね。タンパク質やミネラルを含む胚芽に近い場所だから、板状のその他の成分も残っているかも。デンプンは栄養をたくさん含むけれど、イネが発芽する時にデンプンを糖に変えないとエネルギーを使えません。私たちもこの状態のデンプンを消化することはできず、熱してご飯にすることで消化・吸収できるようになります。イネはどうしてエネルギーとして使いにくいデンプンを作るんだろう?ぜひ考えてみてね。
花びらの構造観察
島田 明璃
観察したもの:家の庭にさいていた花
◆ 気づいたこと
あじさい4種、ビオラ5種の色の花びらを観察しましたが、同じ種類の花の色のちがいは、花びらの構造にちがいは見られなかった。ブラキカムは1枚の花びらが細長く、構造も細長いかたちがいくつも並んでいた。ガウラは白い釣鐘状の花で、毛のような構造のものがいくつかあった。全部、観察する1~2時間前に庭で切った花で、見たかんじはきれいなのに、切ってしまうとあっという間に乾燥してしまうということも、わかりました。
◆ 科学館職員のお返事
花の色は表面の形ではなくて色素で決まっていそうなことが分かって大発見だったね!
植物の種類によって表面構造は違ったけれど、どの花も表面はでこぼこなんだ。でこぼこにはどんな意味があるんだろう?でこぼこだと、花にいい事があるのかな?見た目でもいいから、元気な花(でこぼこ)と、しおれちゃった花(でこぼこじゃない)をくらべると、何か分かるかもしれないね。
アマモとオオカナダモの葉の相違
飯尾 晄太
観察したもの:アマモ、オオカナダモ
◆ 気づいたこと
オオカナダモはアマモに比べて一つ一つの細胞の大きさが大きく、簡単な作りになっていたため薄かった。一方、アマモはオオカナダモより作りが頑丈で、何層にもなっていたため厚かった。このことから、オオカナダモは簡単なつくりにすることで、引っ張られた時に葉一枚がちぎれるだけで済んで、根まで抜かれる心配がないからだと考えた。そうなると、アマモの葉はとても頑丈でちぎれにくい。そのため、根まで抜けてしまうのではないかと考えた。
◆ 科学館職員のお返事
今回の観察で植物の遷移を思い浮かべました。撹乱後の場所では生育の早い簡単な造りの草が繁茂します。その後、複雑な造りの樹木が優占します。一時的なため池のような場所では、より簡単な造りのオオカナダモがすごいスピードで増殖します。根が無くても増えることができます。一方のアマモは根を張って、時間をかけてゆっくり増えるスタイルです。アマモが生育する安定的で生物多様性が高まる場所はどうすれば作られるのかな?
紙の繊維の違い
森 宏太郎
観察したもの:折り紙、雲龍染和紙、和紙
◆ 気づいたこと
電子顕微鏡でみたら、ものすごく良く繊維が見えました。折り紙の表面では、繊維があまり見えなかったのに対し、雲龍染和紙は、表面でも繊維がよく見えました。折り紙の繊維はだいたい見た目どうりだったけど、雲龍染和紙は、透けていてとても薄いのですが、思ったより繊維がスカスカではなく、繊維の密度が濃かったです。デジタル顕微鏡で和紙を見ると、宇宙みたいに見えて面白かったです。
◆ 科学館職員のお返事
折り紙に使う紙の種類による繊維の違いを観察するという視点が面白いなと思いました。
市販の折り紙は洋紙と呼ばれる、パルプを原料にした紙で、木材などを化学的に処理して作られています。折り紙と比較すると、雲龍染和紙は繊維の一本一本が長いことがわかります。和紙は、木の皮部分の繊維を漉いて作るので、薄くてもちぎれにくく、折り紙に向いているのかもしれません。
ひまわりを育てるための土の再利用
有薗 朋希
観察したもの:去年ひまわりを育てるのに使った土、
去年ひまわりを育てるのに使った土に肥料を混ぜたもの、今年買ってきた土
◆ 気づいたこと
私は、大きなひまわりを狭い場所でも育てたい。今年は3つの視点から探究をした。そのうちの1つは、去年の土を再利用して育てることだ。去年の土、去年の土に肥料を混ぜたもの、今年買ってきた土を使って育てた結果、今年買ってきた土の育ちがよかった。違いを見つけるために顕微鏡で観察した。色、湿り気、成分が違うことが分かった。でも、詳しい部分までは分からなかった。違いの理由を考えて調べ続けることが大切だと思った。
◆ 科学館職員のお返事
土を拡大してみると、土以外にも根っこのような、繊維状のものが入っていることが分かります。新しい土は色が黒く、保湿力にも違いがあるように思えます。去年の土に肥料を混ぜると少し育ちが良くなるということは、新しい土には植物が育つための栄養分が多いのかもしれません。目には見えない、土の化学的な成分や微生物のはたらきなども調べてみると、新しい土と去年の土で違いがあるかもしれません。ぜひ、調べ続けてみてください。
ぼくが育てたあさがおと、公園のあり
臼井 開理
観察したもの:アサガオの葉・茎、トビイロシワアリ
◆ 気づいたこと
あさがおの葉を触るとふわふわしているけど、電顕で見たら、チクチク痛そうな毛がみえた。表より裏側の方がたくさん毛があって、でこぼこ月のクレーターや口みたいな形がみえた。ぼくと同じように息をするのかな?茎と毛の中は、ストローみたいな穴が開いていた。
公園で見つけたありのおなかに、なんと‼︎ 花の花粉が付いていたよ。ありは気付いているのかな?こうやって花粉が運ばれて、色々なところで花が咲くのかなと思った。
◆ 科学館職員のお返事
僕たちヒトから見るとあさがおの葉はつるつるに見えるけど、拡大すると剣山のようだね。トゲは何のためにあるんだろう?葉のトゲも中空で柔らかいとしたら何かを刺すためのものではないのかも?もしアイディアを思いついたら教えてね。花粉はありの毛にくっついているね。花粉側の表面の突起で見事に毛をつかんでいるように見えるよ。花粉は他の生き物に運んでもらうように形を工夫しているんだ。他の花の花粉の形も調べてみると面白そうだね。
虫の足の不思議
~くっつく?くっつかない?どっちなんだい!?~
井上 櫂斗
観察したもの:ショウリョウバッタ、ウスバキトンボ、
ヤマトシジミ、シロテンハナムグリ
◆ 気づいたこと
プラスチックの虫かごの壁に、くっつける虫・くっつけない虫がいたので、どんな違いがあるのか気になり中あしの符節を見てみた。ウスバキトンボとシロテンハナムグリは鋭いツメでひっかける構造になっているからつるつるな面にくっつけなかった。ショウリョウバッタには吸盤があり、シジミチョウには細かい毛がたくさんあるからつるつるな面にくっつけるのがわかった。虫の足は全然違って面白い!もっと色んな虫の足を観察したい。
◆ 科学館職員のお返事
ツメさえあればどこでも歩けるわけではないんだね。チョウやバッタが花や草の表面を歩くには、細かったり吸盤だったりすると都合がいいんだろうね。一方のトンボやハナムグリでは、木の枝や幹で体を支えるために大きなツメの方がいいのかな。ウスバキトンボには突起が2つあって、生きる上でどのように役立っているのか気になるね。それぞれの昆虫の生態を観察すると、ツメの機能性をより深く理解できるかも。
脱皮殻からわかったたくさんのひみつ
上遠野 陽史
観察したもの:カマキリの脱皮殼、ツチイナゴの脱皮殼、
カマキリの赤ちゃんの死骸
◆ 気づいたこと
抜け殻が、昆虫の体の毛や触覚の一本一本とかすごく細かいところまでそのままだったことに感動した。僕は脱皮は何回見ても感動するんだけど、抜け殻もすごい。僕が見たかった、前脚のカマについている毛も見れた。カマキリが複眼を掃除するときに使う毛だ。カマキリの耳がお腹の部分にあるのも初めて知っておどろいた。あと、カマキリとイナゴの複眼の個眼の形が違うこともわかった。他の昆虫の複眼も見てみたくなった。
◆ 科学館職員のお返事
カマキリの複眼は獲物を探すための重要な器官だから、掃除専用の毛が用意されているんだね。最近の研究で、昆虫の複眼は形成されるときに個眼が風船のように膨らみつつ、複眼全体がどの方向に伸ばされるかによって六角形 or 四角形が決まることが明らかになったよ。個眼の場所は最初から決まってはいないんだね。僕はアリやミツバチの複眼も見たことがあるけれど、カマキリやバッタとは全く違っていたよ。複眼から生活史や進化が見えてきたら面白いね。
アリとハチの違い
蓑島 樹希
観察したもの:オオハリアリ、オオスズメバチ
◆ 気づいたこと
アリはハチが地面で暮らせるように進化した昆虫だ。そのひみつを調べた。アリとハチの触角には両方とも細かい毛があるが、アリには穴があり、ハチには突起物(小さい角みたいなのと、細長くてナメクジみたいなの)があった。この違いから、アリの触角の穴は地面に住む為のもの、ハチの触角の突起物は空を飛ぶ為のものと考えた。針は、ハチにはギザギザと鞘があるのにアリにはなかった。同じハチ目なのに違いが多くてびっくりした。
◆ 科学館職員のお返事
触角の微細構造は、アリとハチどちらも複雑だね。毛だけに注目しても長い毛、短い毛、太い毛、細い毛などたくさんの種類がある。きっとそれぞれの毛に役割があって、ヒトには感じることができないアリ・ハチ特有の感覚世界が広がっているんだね。針は返しの有無の違いはあるものの、鞘に包まれているのは同じみたい。アリには針がある種とない種がいるけれど、針を持つハチからアリが進化する過程で針の退化や再獲得があったのかな?気になるね。
ナミアゲハの翅の鱗粉
島田 暉大
観察したもの:ナミアゲハのオス
(今年6月、残念ながら羽化に失敗してしまった個体)
◆ 気づいたこと
鱗粉は雨や水をはじいて、蝶が生きるために重要な役割をしています。日常や工業製品にも防水の機能は求められていて、植物や生物などの自然が備えもつ力からヒントをたくさん得ています。鱗粉は粉と書くように、手には細かい粉がつきますが、実際は鳥の羽根のような形をしたものが無数?に規則的に並んで、屋根瓦のようにかさなって、水を流すしくみになっていました。鱗粉をとると、まだ鳥肌のように根本が残って並んでいました。
◆ 科学館職員のお返事
手で触っただけでとれちゃう蝶の鱗粉。鳥の羽根のように付いていて、抜けやすくなっているんだね。水をはじくために存在するなら、ずっとあった方がいいと思うんだけれど、とれやすいのはなぜだろう?単純に撥水するだけでいいのなら、ハスの葉のように凸凹の構造を作ればいいはず。蝶の生活史を観察することで、撥水だけじゃない鱗粉のいろいろな機能の可能性が見えてくるかもしれないね。
セミの翅にあったものは・・・!?
飯尾 明香里
観察したもの:クマゼミの翅
◆ 気づいたこと
私は最初、セミの翅はつるつるしていると思っていた。けれど、実際に見てみたら、凸凹していた。この凸凹は、とげで、細菌を殺すためにあると分かった。どの翅の部分にもこの凸凹があった。このことから、セミは、自分の体にとげを作ることで、細菌から守るということが分かった。次は、ほかの昆虫の翅と比較してみたい。
◆ 科学館職員のお返事
セミの翅の凸凹で細菌を刺して殺す、科学雑誌Natureに掲載されたIvanova (2013)の研究の一端を見られて僕も興奮しちゃったよ。生き物の凸凹には、撥水する植物の葉や、色を鮮やかに見せる顕花植物の花のようにさまざまな役割が知られているよ。もしかしたらセミの翅の凸凹には、Ivanova博士も気づかなかった殺細菌以外の効果もあるかもしれないね。生きたセミの行動を観察すると新たな発見があるかも!
コンポスト 生ごみを分解してくれる虫
山下 晏寿
観察したもの:アメリカミズアブの幼虫
◆ 気づいたこと
コンポストにいるウジ虫がどのように生ごみを食べているのか不思議に思いました。初めはとがった方がおしりだと思っていたけど、電子顕微鏡で顔だと分かりました。想像していた顔とはちがっていて宇宙人みたいでビックリしました。口はチャックみたいで、こんな口で生ごみをどんなふうに食べているのかもっとわからなくなってしまいました。いつもウジャウジャいて気持ち悪かったけど、ちょっとかわいいなと思いました。
◆ 科学館職員のお返事
生ごみへ頭をつきさして、チャックのような場所付近のトゲトゲでトンネル掘削機のように食べすすめるそうです。晏寿さんが生ごみ処理に注目したように、ミズアブは何でも食べて、しかも自身は高タンパクで飼料に活用できるとたくさんの人が研究しています。「かわいいな」という感想もとても大切です。ミズアブのかわいいポイントがイメージアップに繋がれば、社会の役に立ちやすくなるかもしれないね。まずはぬいぐるみを作ろうか。僕は欲しいな~
プラナリアは泳ぐのか歩くのか
鈴木 杜真
観察したもの:プラナリア
◆ 気づいたこと
僕はプラナリアは泳ぐと思っていて、吸盤みたいなもので壁に貼りつくと予想した。母は表面に毛が生えていて、毛を揺らして歩くと予想していた。電子顕微鏡で見ると表と裏は表面に違いがあった。貼りつくお腹側はパンの生地みたいに滑らかで、背中側は岩みたいなデコボコがあった。足や毛はなかったが、体の端が盛り上がっていた。ここが動くヒミツじゃないかと思った。また普段は隠れている紐状の口まで見れたことが凄かった。
◆ 科学館職員のお返事
結果は杜真君の予想の方がお母さんより近そうだね。僕は初めて生きたプラナリアをじっくりと観察したけれど、水中を浮遊するところから物にピタッと張りつく姿に感動してしまったよ。あと、口の位置が頭(目の付近)ではなくて体の後ろ半分にあることも知らなかったよ。市街地の排水路にもいる身近な生き物だけれど、未知なことがたくさんあって生き物観察の面白さをあらためて感じました。
大好きな鳥と卵の関係はmiracle!!
岡部 桃子
観察したもの:エミューの卵殻
◆ 気づいたこと
エミューの卵殻の表面は洞窟のような穴が開いていました。断面は3層構造が見えました。卵膜は網目状で小さいコブがついていました。これらは昨年観察したニワトリとウズラの卵殻と同じ構造でした。厚みは約1mmでニワトリの約3倍でした。卵殻の構造は卵の大きさによって変わりませんでしたが、卵が大きいほど卵殻は厚く、重くなっていました。卵の重さと親鳥の身長や体重との関係について、その他の鳥も加えて、グラフにしました。
◆ 科学館職員のお返事
鳥の体と卵の大きさ、そして今回の観察で卵の殻とも正の相関がありそうなことも分かったね。卵の殻には材料が必要だから、ギリギリまで削減することで鳥類全体で一定の法則性がありそうだね。法則性が見つかったら、次に面白いのは例外だね。グラフのキウイのように極端に卵のサイズが大きかったり、過去の論文を調べるとカモメやワタリアホウドリは殻の厚さが例外的に薄かったりするそうだよ。全体と局所の両方を調べていくと、より深い理解が得られるかもしれないね。
卵から見る脊椎動物の進化と産卵場所
渡邉 凛太朗
観察したもの:卵(ハミルトンガメ、イリエワニ、
ニシアフリカコビトワニ、ダチョウ、エミュー、ウズラ、ニワトリ)
◆ 気づいたこと
卵殻の断面について、層の数を比較した。エミューは4層、イリエワニは2層、ニシアフリカコビトワニは2層だった。爬虫類は原始的な構造で層の数が少ないが、進化した鳥類は層が多かった。次に気孔を比較した。外気にさらされる場所に産卵する鳥類は、卵内の水分が蒸発しないように気孔を少なくし、爬虫類は地中や植物に覆われた巣に産卵するため、気孔を多くして不足しがちな酸素を取り込んでいることがわかった。
◆ 科学館職員のお返事
僕たちは鳥の卵を見慣れているから違和感がないけれど、脊椎動物にとって乾いた陸地に大きな1個の細胞を産み落とすなんて、かなりの無理難題かもしれないね。捕食者、乾燥、病原菌など、陸地には危険がたくさん。裸眼での観察では、爬虫類の気孔の密度が中央部分で小さく見えたね。もしかしたら、病原菌が多い地面と接しやすいせいかもしれないね。渡邉君が好きな恐竜の卵の構造はどうなっているのかな?
ぎゃあっ!なんだこりゃーっ!!
野上 稜
観察したもの:とりのはね(カラス)
◆ 気づいたこと
1枚の羽毛の中にとても細かい毛がたくさん生えていて、観察する場所によって生え方が違っていた。下の方の毛に隙間がたくさん空いていた。上の方の毛は詰まって生えていて、他の毛にひっかかるようになっているものもあった。羽根が伸びたり縮んだりする秘密は毛の並び方にあった。
◆ 科学館職員のお返事
1枚の羽根は小さな羽根のようなものの集合体なんだね。そして、小さな羽根にはフックがあって連結しているんだ。まるでマジックテープのようだね。鳥の羽根と植物の葉は、形は似ているけれど形を維持する機構は全く違うんだ。羽根は裂けてもマジックテープでくっつくけれど、葉は修復できないね。代わりに葉の造りは簡単だからたくさんの葉(樹種によっては1本の樹で1万枚以上の葉)をつけることができるよ。受注生産と大量生産の関係みたいだね。
カラスの食性調査
山下 瑞喜
観察したもの:近所で採取したカラスのペリット
◆ 気づいたこと
カラスのペリットを一年中拾って、何を食べているか調べました。4枚の写真はすべて人工物です。カラスはいつも自然の食べ物を食べていますが、エサと間違えたりゴミをあさったりして人工物も食べることが分かりました。ぼくは、カラスのペリットを集めているときに、カラスが金網の間にくちばしを入れてゴミをあさっているのを見ました。そのため、金網のところは真ん中にゴミを置くなど人間が工夫することが必要だと思いました。
◆ 科学館職員のお返事
キャンプ場ではゴミを厳重に管理して、野生動物であるクマとヒトとの距離を保つように心がけられます。一方のカラスはゴミを荒らす悪者扱いをされがちだけれど、考えてみるとカラスもクマと同じ野生動物。カラスがゴミと一緒に人工物を取り込んでしまうことは、ヒトが加害者である一面もあるんだね。感情だけでなく、大量のサンプルからデータをそろえて客観的に検討することは、課題解決する上でとても大切なことです。これからも探求してみてね。
私のガードマン!〜かさぶた〜
氣賀澤 柚菜
観察したもの:黄色のかさぶた、赤色のかさぶた
◆ 気づいたこと
かさぶたには、目に見えない毛やゴミが入っているのが見えて体内への侵入を防いでいることがわかった。赤色のかさぶたには赤血球らしきものが見えたが、黄色のかさぶたには見えなかった。赤色のかさぶたは表面がツルツルしていたが、黄色のかさぶたは表面が凸凹していて、繊維状のものが多くゴミや血球などが絡みやすそうだった。
次は、赤色のかさぶたと黄色のかさぶたとなる条件の違いについて調べていきたい。
◆ 職員のお返事
僕たちの身体は外から栄養を取り込んだり、不要なものを出したり、外の環境とつながっていないと保てないね。だけれどつながりすぎても身体の中が混乱しちゃう。かさぶたは身体と外の環境との境界線を作る役割があるんだね。道路の材料に使われるアスファルトとコンクリート。アスファルトは固まりやすくて工事後すぐに車が走れるよ。コンクリートは固まりにくいけど、とっても丈夫。かさぶたの色によってそんな性質の違いがあったら面白いね。
菌
髙橋 創太
観察したもの:乳酸菌(チチヤス ハニーヨーグルト)、
納豆菌(金のつぶ たまご醤油たれ)
◆ 気づいたこと
目には見えない菌を観たかったので選びました。
乳酸菌も納豆菌も丸が2つや4つつながっていました。
大きい丸や小さい丸があり横に並んでいました。
1個の大豆に数えきれないほどの菌があり、その菌が生きていた事にびっくりしました。
◆ 科学館職員のお返事
乳酸菌も納豆菌もものすごい数だったね。創太君の言うとおり、大豆の上には何匹の納豆菌が暮らしているんだろう?納豆菌にとって1粒の大豆は1つの惑星のような存在かもしれないね。
そして、確かに数粒単位で連なっている。でも何十個とか連なりすぎなくもある。もしかしたら一定の法則があるのかもしれないね。一見するとただの丸のような乳酸菌、納豆菌にも、人間社会のようなルールやコミュニケーションが存在していたら面白いね!
プラスチックでバクテリアはどうなった?
山田 暖華
観察したもの:イカ、バクテリア液、水、
プラスチック(ビニール、発砲スチロール、ペットボトルキャップ)
◆ 気づいたこと
イカのバクテリアなし・ありは、顕微鏡で観た時のでこぼこがちがった。バクテリアありはでこぼこが少なかった。その理由はバクテリアがたくさん分解したからだと思う。水とプラスチックは、バクテリアの量やまとまり方が大きくちがった。プラスチックに入った添加物から有害物質が出て、バクテリアが少なくなった可能性が考えられる。プラスチックを捨てることで自然に影響がないように、皆にプラスチックをリデュースしてほしい。
◆ 科学館職員のお返事
バクテリアがイカの表面をなめらかにするんだね。イカの塩辛はバクテリアではなくて酵素がかかわって発酵するけれど、同じようになめらかになっているのかな?食感的にはそんな気がするよ。プラスチックの実験では興味深い結果が出たね。どんなプラスチックがよくなさそうか、プラスチック以外にも身の回りには添加物が使われている人工物がたくさんあるから多くのものを比べてみるとより環境に負荷を与えない方法が見つかるかもしれないね。
チョコレートは溶けると元には戻れない!?
岡部 心咲
観察したもの:溶けていないチョコレート、
一度溶けたチョコレートを固めたもの
◆ 気づいたこと
チョコレートは28℃以下で保存すると容器に書かれています。最高気温28℃の日に外に出してみたらトロトロに溶けました。電子顕微鏡で観察すると、溶けていないチョコレートは細かい粒々がぎっしりひっついているけれど、溶けたチョコレートは粒々がまばらで大きさがばらばらでした。食べた感じは溶けたチョコレートはざらざらしましたが、甘さは同じでした。一度溶けたチョコレートはまたすぐに溶けてしまうように感じました。
◆ 科学館職員のお返事
一度溶けたチョコの結晶は不揃いだったね。観察の時にパッケージの原材料を確認したけれど、たくさん含まれている砂糖や油脂が再結晶によって不揃いになってしまったのかもしれないね。職人さんの油脂を均等に結晶化させるテンパリングにはとても繊細な温度設定が必要だそうだよ。お料理には化学の知識が必要なんだね。
石くらべてみた
小林 由実
観察したもの:天竜川の石、三方原台地にある畑の石
◆ 気づいたこと
畑の石は全部穴があいていたけど、川の石は見た目がちがう石だったのに穴はあいているものはありませんでした。ですが、川の石はキラキラしているものがたくさんあったけれど、畑の石はキラキラしているものがほとんどありませんでした。同じ浜松の石だけど、場所によって石がちがうということがわかりました。三方原台地の石はどこから来たのか知りたいです。
◆ 科学館職員のお返事
僕も気になって調べてみたら、三方原台地も東側の平地も天竜川由来の土砂であることは間違いなさそうです。ただ、平地は完新世、三方原台地は更新世に作られたらしいよ。つまり三方原台地の方が100~200万年くらい古い土地なんだね。長い時間天風にさらされることで、観察したような小さな穴が空いたのかも。場所によっては2億年以上前の由来の土地も浜松市内にあるんだよ。何気なく歩いている地面でも時代を想像するとなんだか不思議な気分になるね。
探求賞
24件の観察記録のうち、特に優れた観察5件が選ばれ「探求賞」が贈られます(審査員:針山孝彦先生(浜松医科大学特命研究教授))。
以下に受賞者をご紹介します。
有薗 朋希
ひまわりを育てるための土の再利用
観察したもの:去年ひまわりを育てるのに使った土、去年ひまわりを育てるのに使った土に肥料を混ぜたもの、今年買ってきた土
山下 晏寿
コンポスト 生ごみを分解していくれる虫
観察したもの:アメリカミズアブの幼虫
鈴木 杜真
プラナリアは泳ぐのか歩くのか
観察したもの:プラナリア
岡部 桃子
大きな鳥と卵の関係はmiracle !!
観察したもの:エミューの卵殻
岡部 心咲
チョコレートは溶けると元には戻れない!?
観察したもの:溶けていないチョコレート、一度溶けたチョコレートを固めたもの
おわりに
毎年の繰り返しになりますが、参加した子供たち、子供たちを支えてくれた保護者の皆さん、審査員として見守ってくださっている針山先生、そしてここまでお読みいただいた読者の皆さんに感謝申し上げます。どんなイベントも主催者だけでは成り立たないものですが、自由に研究ラボは特にその色が強く、皆さんの好奇心で成り立っていると言っても過言ではありません。
昨年度までは「市内」小中学生という制限がありましたが、今年度からすべての地域の小中学生も参加可能としまして、有難いことに何名か市外の方にもご参加いただきました。
来年は果たしてどんな試料が持ち込まれるのでしょうか? どんな探求的冒険が待っているのでしょうか? 楽しみで今からドキドキしています。
来年度も皆さまのご参加を心よりお待ちしております。
この記事が参加している募集
自然観察園の整備活動や、生き物観察に必要な物の購入に充てさせていただきます。ご支援のほど、よろしくお願いいたします。