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キジバトはクリスマスにも愛を叫ぶ

今年もクリスマスの時期になりましたね。
ドキドキなプロポーズを計画されている方もいらっしゃるのではないでしょうか?

野生動物もヒトと同じように異性へ愛のメッセージを届けます。
特に野鳥は、異性へ餌をプレゼントしたり、巣を用意したり、さえずったりとかなり情熱的。
この中の「さえずり」は、オスがメスへ繁殖期に贈るラブコールです(ライバルのオスへの縄張り宣言の意味もあります)。

さえずりと言えば、ウグイスの「ホーホケキョ」が有名ですね。

ウグイスの初鳴きは春の訪れの指標として気象庁の「生物季節観測」に含まれていましたが、来年以降は気候変動を理由に除外されてしまうとのこと。少し寂しいです。

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先日、自然観察園で科学館スタッフと散策中にウグイスと出会いました。
しかし「ホーホケキョ」とさえずることなく、ヤブツバキの樹の中で、「チャッチャッ」と鳴いていました。
春から夏の繁殖期以外はさえずることなく、今の時期は地鳴きという地味なフレーズで鳴きます。

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ウグイスが地鳴きする傍らで、キジバトが「ポーポーポッポー」と鳴いていました。

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よく早朝に聞く穏やかなこの声、実はキジバトのさえずりなのです。

筆者はこの鳴き声で朝を迎えると、何だか幸せな気分になります。

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さえずっているということは、鳴いている個体は全てオス、そして現在も繁殖期であることを意味します。
キジバトの全国的な調査では、特に西日本でほぼ一年中繁殖を行うことが分かっています。

繁殖期が春~夏に限られるウグイスと、一年中繁殖期なキジバト。
一体どのような要因が種間の繁殖期のズレを作っているのでしょうか?

野鳥が繁殖するにあたって、「ヒナの餌の確保」が一つのボトルネックになります。

小さなヒナは短期間に親鳥の大きさまで成長しなければなりません。
その為、多くの場合、ヒナへ与える餌は身体の形成に必要な「タンパク質」を多く含む「昆虫」に限られます。
メジロやヒヨドリ、ウグイスの親鳥は、昆虫の他にも花の蜜や果実など様々な餌を食べますが、彼らもヒナへ与える餌は昆虫に限定します。

四季が明確にある日本では、通年で昆虫の発生する量に波があり、春から夏にかけて最も多くなります。
その為、野山の野鳥の多くは春から夏を主な繁殖期に充てるのです。

一方のキジバトは、なぜ一年中繁殖が可能なのでしょうか?

実はキジバトのヒナは昆虫ではないタンパク質を豊富に含む餌を与えられているのです。
それはズバリ「素嚢乳」。

英語では「ピジョンミルク」と呼ばれる液体です。
訳すと「ハトの乳」、あまり聞き覚えのない単語ですね。

ピジョンミルクとはハトやフラミンゴの仲間が口から出す液体で、食べた餌を一時的に保存する素嚢という袋から分泌されます。
色は白色~黄色で、タンパク質や脂質を多く含み栄養満点です。

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キジバトの親鳥は穀物を主な餌としてしますが、消化吸収した栄養をピジョンミルクに変換することで、ヒナにタンパク質を与えることができるのです。
さらに「タンパク質を生産する能力」によって、「繁殖時期は昆虫の多い春から夏」という季節的な制約をなくすことに成功しました。

それでは一年中繁殖可能なキジバトは、無限に増殖することができるのでしょうか?

実際、そう上手くはいかない様です。

1回の繁殖に産む卵の数はウグイスの4~6個に対して、キジバト(多くのハトも同様に)は1〜2個。
さらにキジバトは、繁殖成功率が他の野鳥と比較して低いことが知られています。
卵の個数が少なく成功率も低いことから、長い繁殖期間中に何度も子育てをトライすることによって、ようやく一定数の子孫を残すことができるのかもしれません。

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聖なるクリスマスにも愛を叫ぶ、ロマンチックなキジバト。
「ポーポーポッポー」というさえずりが聞こえたら、ピジョンミルクの存在を思い出してみてください。

おまけ

12月20日(日)、27日(日)に「親子でバードウォッチング」を開催します。
馬込川で一緒に野鳥を観察しましょう!
双眼鏡の使い方からお教えしますので、初めての方にオススメです。

12月25日(金)、26日(土)に「トークオブワンダー」と題して、クリスマスにちなんだ「生き物から学ぶプロポーズ♡」をテーマにサイエンスカフェを開催します。
お近くの方はぜひお越しください!


参考資料
亀田佳代子 キジバト. Bird Research News Vol.3, No.8, 2-3 (2006).

105歩で生き物観察ヘッダー



😊 ゴマダラチョウの幼虫をプレゼント!
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浜松科学館自然観察園は地域の方々のお散歩ルート。歩道は端から端まで105歩。普通に歩けば1分足らずで通過してしまいます。 その1歩1歩にもたくさんの生き物がいて、関わり合い、科学的な事象が起こっています。「小さな森での小さな出会い」を少しずつお届けします。